ヒトはなぜ人間に進化した? 12の仮説とその変遷

ヒト属の新種ホモ・ナレディ発見にあたり考えた

2015.09.18
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11.適応する

 米スミソニアン博物館人類起源プログラムを指揮するリチャード・ポッツ氏は、人類進化は1度の契機によるものではなく、気候変化の影響の積み重ねと考えている。ポッツ氏によれば、300万年近く前にヒト属が出現した頃、気候は湿潤と乾燥の間で変動していた。自然淘汰によって、予測できない変化が絶えず起こる状況でも耐えられる霊長類が生き残ったのだ。ポッツ氏は、順応性自体が人間を定義づける特徴だと唱えている。(参考記事:「最古のヒト属化石を発見、猿人からの進化に新証拠」

12.団結し、征服する

南アフリカのピナクルポイントで見つかった、初期のホモ・サピエンスによる投てき武器。人類学者のカーチス・マリアン氏は、人類の協調能力の反映とみる。(Photograph by Per-Anders Pettersson, Getty Images)
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 人類学者カーチス・マリアン氏は、グローバル化時代に合致する人類起源の見方を提示している。我々は究極の侵略的種族だというものだ。1つの大陸に数万年も閉じ込められた後、我々の祖先は地球全体を支配下に置いてしまった。なぜこんな偉業が可能だったのか? マリアン氏によれば、鍵は遺伝的に備わっていた協調性だ。この性質は利他主義ではなく、争いに由来する。協力に長けた霊長類のグループは対立するグループよりも有利になり、その遺伝子が残った。「我々の祖先の発達した認知能力にこのような独自の性質が加わったことで、新しい環境にも巧みに適応できるようになった」とマリアン氏は記している。「また、イノベーションを促す役割も果たし、高度な投てき武器という画期的な技術を考案した」

 これらの説は果たして正しいのか、それとも誤っているのだろうか。

 優れた説は多いが、いずれも先入観にとらわれている。「人類は1つあるいはいくつかの分かりやすい特徴によって定義でき、ホモ・サピエンスへと至る必然的な道のどこか1カ所で起こった進化上の事件が決定的な転機となった」というものだ。

 だが、彼らは現生人類のベータ版ではないし、「何か」を目指して進化していたわけではない。ただ、アウストラロピテクスやホモ・エレクトスとして生き抜いていただけだ。獲得した特徴のどれか1つが決定的となったわけでもない。進化の歴史に必然の帰結などというものはあり得ない。道具を作り、石を投げ、肉とイモを食べ、協調性と順応性が高く、大きな脳を持ち、殺りくをするサルが、結果的に私たちになった。そして、進化は今も続いている。

※ホモ・ナレディ発見についての詳細は、9月30日発売の『ナショナル ジオグラフィック日本版』2015年10月号で図解や写真を含めて詳しく紹介します。

『ナショナル ジオグラフィック日本版』2015年10月号

文=Mark Strauss/訳=高野夏美

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