中東で砂嵐の被害拡大、12人が死亡、被害者数千人

シリア難民も被災、世界各地で猛威をふるう可能性

2015.09.11
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NASAがとらえた大砂嵐の写真。広範囲で吹き荒れていることが分かる。(Photograph by NASA)
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 中東の少なくとも7カ国で今週、大規模な砂嵐が吹き荒れ、判明しているだけで少なくとも12人が死亡した。気象の専門家によれば、こうした砂嵐は「非常に単純な条件」がそろうだけで発生するという。

 アラビア語で「暴風」を意味する「ハブーブ」と呼ばれる猛烈な砂嵐は、世界各地で発生する可能性があり、数千マイルも移動することが知られている。ときには太平洋を横断するに等しい距離に及ぶことさえある、と話すのは米国国立気象局(NWS)で砂嵐を研究する気象学者、ケン・ウォーターズ氏だ。(参考記事:「豪雨、竜巻、雷、台風…異常気象の衝撃写真13点」

 砂嵐に覆われた中東では視界が遮られており、イラク、シリア、レバノン、エジプト、ヨルダン、イスラエル、キプロスの各地で数千人が呼吸の異常を訴えて、病院で手当てを受ける事態となっている。砂嵐はシリアとイラクで発生したとみられ、すでに2日間以上吹き荒れ、視界が悪い状況は週末まで続く見込みだ。

レバノン東部の都市バールベック郊外にあるシリア難民キャンプ。2015年9月7日、キャンプのテント群は砂嵐に覆われた。(Photograph by AFP, Getty Images)(参考記事:「戦火を逃れ 国境を越えるシリア難民」
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 砂嵐の深刻な影響としては、交通機関の混乱と大気汚染が典型的だとウォーターズ氏は指摘する。

 レバノン、ベイルートにあるラフィク・ハリリ国際空港の気象学者らは、近年のレバノンでは「前例がない」と言うものの、ウォーターズ氏は「強い砂嵐はそれほど珍しいものではない」と言う。ハブーブは暑く乾燥した条件下で最も起こりやすく、今夏の中東の大部分が当てはまる。そして、地表に塵や砂の粒子があり、その粒子を十分に舞い上がらせる風が吹き続けるという2つの要素がいる。

9月8日、エルサレムの「岩のドーム」前を防塵マスクを着けて歩くパレスチナ人男性。(Photograph by Ahmad Gharabli, AFP, Getty Images)(参考記事:「人類の旅路 「約束の地」レバントを歩く」
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 どのぐらい強い風が吹けば砂嵐ができるかは、科学者もはっきりとは分かっていない。これまでの観測では、小規模で局地的な砂嵐は時速30キロ強程度の風でも起こることが分かっている。ただし、ダマスカスやベイルートに被害を与えたこの大規模な砂嵐が長距離を移動するには、より大きな風速が必要となる。同じ地域で2013年に猛威を振るった砂嵐の風速は、時速97キロにもなった。(参考記事:「シリア 終わらない内戦 首都ダマスカスの現実」

レバノンの首都ベイルートの海岸は砂嵐でほとんど視界がきかなくなった。(Photograph by Bilal Jawich, Andalou Agency, Getty Images)
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 米国西部でも、砂嵐は暑くて乾燥する6月から9月にかけて最も多く発生する。湿気があれば塵は重くなって地表にとどまるため、干ばつの間により発生しやすい。建設工事や農地の休耕といった人間の活動でも表土は剥がれやすくなり、砂嵐の要因となり得る。1930年代の米国中西部では、不適切な耕作方法のせいで「ダスト・ボウル」と呼ばれる大規模な砂嵐が発生し、数千人が家を失った。

 2011年の7月と8月にはアリゾナ州で数百マイルに及ぶ範囲が砂嵐に見舞われ、日光が遮られた。その後も同地域では小規模な砂嵐が多く発生している。(参考記事:「飲まれる高層ビル、アリゾナのハブーブ」「巨大砂嵐と稲妻、アリゾナのハブーブ」

砂嵐で日光が遮られたパレスチナ、ガザ地区の空。(Photograph by Suhab Salem, Reuters)(参考記事:「ガザ地区の密輸トンネル」
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文=Brian Clark Howard/訳=高野夏美

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