【動画】糸を使わずに自在に空を飛ぶクモを発見

前肢を使って巧みに旋回する

2015.08.24
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セレノプスというクモは正確に滑空して木の幹にとまることができることがわかった。ふつうは一発で幹にとまることができる。最初に失敗しても・・・次にはとまる。落下しながら前肢で舵取りをして急旋回することができる。

 クモが糸をパラシュートのように使って空を飛ぶことは、よく知られている。けれども今回、熱帯地方に生息するある種のクモが糸を使わずに飛べることが明らかになった。熱帯雨林の樹冠で暮らすこのクモは、落下したときに滑空しながら体勢を整え、近くの木の幹に飛び移ることができる。

 8月19日に『Journal of the Royal Society Interface』誌に発表された論文によると、この命知らずのクモたちは、伸ばした前肢を空中で動かすことで、行きたい方向に進むことができるという。

 研究チームを率いた米ルイヴィル大学のスティーヴン・ヤノヴィアク氏は、熱帯地方の節足動物の生態を研究しているが、「クモが滑空できるとは思っていませんでした」と言う。

 クモたちが滑空できるようになったのは、ふだん樹冠で暮らす彼らにとって、天敵がうようよしている地面より、木の幹のほうがましだからかもしれない。(参考記事:「ピンクのクモと透明のゴキブリ」

落下試験

 ヤノヴィアク氏の研究チームは、数年前から、自由自在に滑空できる虫を探している。調べ方は単純で、高いところから虫を落としてみるだけだ。

 この「落下試験」により、未成熟のカマキリやバッタのほか、多くの種類のアリが、進行方向を制御しながら下降できることが示された。しかし、彼らが最初に調べたクモは滑空することができなかった。(参考記事:「キツツキに乗って空を飛ぶイタチ、写真はホンモノ?」

 いろいろなクモを試した彼らが最後にたどりついたのが、セレノプス(Selenops)というアワセグモ科の大型のクモだった。セレノプスはアメリカ大陸の熱帯地方などに生息し、体長は数cmになるが、体高はわずか数mmで、その平べったい姿から「フラッティ(ぺちゃんこ)」という愛称がついている。

 セレノプスは動きが素早く、その多くは木の幹そっくりに擬態しているので、動かないかぎり見つけるのはほとんど不可能だ。

 ヤノヴィアク氏らは、実験に使うセレノプスを捕獲するため、パナマとペルーに赴いた。パナマではジャングルの木に登り、驚いて逃げ出すクモを片っ端からビニール袋に入れていった。ペルーの熱帯雨林では、高い樹冠に観察用通路が設置されているため、より簡単にセレノプスを捕獲できた。

落下するセレノプスは、空中で猫よりも素早く体勢を整えて滑空することができる。(PHOTOGRAPH BY STEPHEN P. YANOVIAK)
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猫のような敏捷さ

 研究チームは、クモが落下する姿を見失わないよう蛍光パウダーをふりかけ、地上20~25mの高さから落としてみた。
 
 すると、セレノプスはわずか数ミリ秒で体勢を立て直し、頭を下に向け、木の幹めざして滑空していった。(参考記事:「バック転で移動する新種のクモ」
 特に上手に滑空するものは、わずか4mほど落ちる間に、大きく旋回して木の幹にとまることができた。

 ヤノヴィアク氏はこの動画について、「木々の間を落ちていくクモが、自分の行きたい方向に滑空していくのが分かります。左に旋回したいときには右の前肢の角度を変え、右に旋回したいときには左の前肢の角度を変えています」と説明する。

 ヤノヴィアク氏は、現時点では空中のクモが前肢の動きで舵取りをしていると断定することはできないが、体の平べったさは滑空の役に立っているはずだと考えている。

見事な滑空

 今回の研究に関与していない科学者たちも、セレノプスの滑空に驚嘆している。

 進化生物学者でセレノプスの専門家であるサラ・クルーズ氏は、「今回の発見から、クモが昆虫とは違ったやり方で、同じくらい上手に滑空できることを確信しました」と言う。(参考記事:「クモはどうやって天井を歩くのか?」

 マッコーリー大学(オーストラリア)の行動生態学者で『クモの行動(Spider Behavior)』の編者であるマリー・ハーバースタイン氏も、「クモはふつう、落下に備えて引き糸を利用します。糸を使わずに滑空できるとは思いませんでした」と驚いている。

 ヤノヴィアク氏は、「実に見事な滑空でした。クモは糸を使わずに上手に飛ぶことができるのです」と語った。(参考記事:「「青仮面」の新種のクモを発見」

文=Traci Watson/訳=三枝小夜子

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