冥王星探査機がいよいよ“接近通過モード”に

トラブルから無事復旧。最接近の7月14日向けて順調に航行中

2015.07.09
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NASAの探査機ニューホライズンズが撮影した準惑星、冥王星の最新の高解像度写真。探査機は7月14日に冥王星に最も近づく予定。(Photograph by NASA/JHUAPL/SWRI)
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 先週末、冥王星探査機「ニューホライズンズ」との通信が途絶えるという、ヒヤリとする不具合が起きた。幸いすぐに復旧し、7月14日に冥王星を間近で観測する予定だ。現在は通常の運用が再開され、すでに「フライバイ(接近通過)オペレーション」が始まり、凍てついた冥王星のデータ収集がほとんどすべてに優先される態勢になった。

 ニューホライズンズ搭載のコンピューターが数千のコマンドを自律的に開始。小型のグランドピアノほどの重さの探査機は、冥王星と5つの衛星に関するデータを可能な限り集める。(参考記事:特集「はじめての冥王星」

「9日間に及ぶフライバイオペレーションの準備はすべて整っています」と、探査計画のチーフで米サウスウエスト研究所のアラン・スターン氏は自信を見せる。「ニューホライズンズの動作に問題はありません」

 最接近する7月14日まではまだ時間があるが、約7億ドルが投じられた探査機は早くも興味をそそる写真を送信してきた。6日に公開された最新の写真からは、奇妙な凹凸のある地形と、赤道の辺りを暗い色の帯が走る様子が見て取れる。

 7月14日に、ニューホライズンズは冥王星との距離約1万2500キロまで接近する。探査機は時速約4万8千キロで航行しているため、最接近は短時間で終わる。とはいえ、その間に探査機が必死に集めたデータが、今後数年は地球上の研究者たちを忙殺することになるだろう。

「冥王星探査のため、我々は長い道のりを歩んできました。これまでに得られたヒントはいずれも、冥王星は我々を落胆させることはないと教えてくれています」とスターン氏は話す。「この星は、これまで専門家が観測してきたどの星とも違うのです」

なぜトラブルは起きたのか

 だが先週末、探査機の運用チームをトラブルが襲った。

 7月4日午後2時ごろ、ニューホライズンズと地球との通信が途絶。例年ホットドッグ早食い競争でお祭り騒ぎになる独立記念日だったが、ミッション指令センターがある米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所の電話が立て続けに鳴り始めた。

 最初の電話を取ったのは、探査計画のプロジェクトマネージャーであるグレン・ファウンテン氏だった。ファウンテン氏は同研究所のオフィスにいたスターン氏に電話し、スターン氏はNASA惑星科学部部長ジム・グリーン氏の電話を鳴らした(グリーン氏はこの時、孫が誕生する直前だった。「なんて目の回る週末だろう」と後に話している)。

 スターン氏と同僚らはすぐに指令センターに集まり、1時間余りでニューホライズンズとの通信を復旧。問題の原因はすぐに明らかになった。探査機に搭載されたメインコンピューターが、負荷の大きなタスクを2つ同時に実行しようとしたのだ。システムが過負荷となったためバックアップコンピューターに切り替わり、「セーフモード」と呼ばれる状態に入っていた。

ニューホライズンズが送信してきた冥王星の最新高解像度写真からは、表面の明るさにかなりの差があることが分かる。赤道付近に暗色の帯が走るところもあれば、しみのように見えるところもある。(Photograph by NASA/JHUAPL/SWRI)
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「探査機はまさしく設計通りに作動しました」とファウンテン氏は説明する。「セーフモードになると、探査機はデータ収集を停止し、地球に信号を送って助けを求めることになっています」

「暗記した数字のリストをあなたが暗唱している横で、他の人が違う数字のリストを大声で読み上げていたらどうなるだろう。誰でもセーフモードに入ってしまうはずだ」とツイートしたのは、ニューホライズンズ運用チームのアレックス・パーカー氏だ。

 フライバイオペレーションになれば、同様のトラブルが探査機に起きても、重要なデータ収集が止まることはないと考えられている。ファウンテン氏によれば、不具合が発生すると、ニューホライズンズはシャットダウンしたり地球に助けを求めたりせず、自ら再起動してデータ収集を続けるという。

探査は予定通り

 実際のところ、複数タスクによるニューホライズンズの不具合は、探査活動をほとんど妨げなかった。データ収集が停止した時間内に予定されていた観測はわずか30項目ほどであり、7月4日から16日までの接近期間中に観測が予定されている500近い項目のごく一部に過ぎない。

「最優先の探査に、影響は一切ありません」とスターン氏は明言した。

 小さな準惑星と探査機の距離が縮まるころ、運用チームは惑星間の宇宙環境、冥王星表面の特徴や組成、そして5つの奇妙な衛星の性質について熱心にデータを集めているはずだ。すでに得られている画像も十分に興味深い。(参考記事:「冥王星の「踊る」衛星を発見、ハッブル望遠鏡」

 冥王星最大の衛星であるカロンは灰色で、一方の極付近に大きな暗い色の部分があるが、冥王星自身はやや赤みを帯びている。その表面の明るさには大きなばらつきがあり、明るい部分がある一方、それ以外はかなり暗い。6日現在、ニューホライズンズと冥王星との距離は800万キロ余りとまだかなり遠く、表面の特徴を細かくとらえることはできない。だが撮影された画像では、詳細不明の物質からなる暗い色の帯が冥王星の赤道を取り巻いていることが分かる。この帯が分かれて、大きさがほぼ同じ4つの斑点になっている場所もある。斑点1つの大きさは日本のほぼ半分だ。(参考記事:「冥王星とカロン、アルマ望遠鏡撮影」

 冥王星の大部分は謎に包まれており、これらの斑点も例外ではない。しかし、その正体は近いうちに判明するだろう。ニューホライズンズ運用チームの一員で米国月惑星研究所のポール・シェンク氏は、「この模様が何を意味するのかをめぐって、プロジェクトの関係者も一般の人々も大いに盛り上がると思います」と期待を寄せている。

文=Nadia Drake/訳=高野夏美

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