ゾウの60%が消えたタンザニア、その原因は

密猟の実態を告発した環境保護団体に聞いた

2015.06.18
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最新の発表によると、タンザニアに生息するゾウの数は密猟によって過去5年間で60%減少し、およそ11万頭から4万3000頭をわずかに上回るだけになってしまった。(PHOTOGRAPH BY FRANS LANTING, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 タンザニア政府は6月、国内にいるゾウの個体数が過去5年間で60%以上減少したと発表した。

 アフリカ東部に位置する同国は、違法に取引される象牙の世界最大級の供給源になっている。ゾウの個体数は2009年には10万9051頭だったが、2014年末にはわずか4万3330頭へと激減した。

 同国のラザロ・ニャランドゥ天然資源観光大臣は激減の理由を、ゾウが隣国へ移動したためではないかとして、「何が起きたのかは、現在調査中」と発言した。

 これを受け、環境保護団体「エンバイロンメンタル・インベスティゲーション・エージェンシー(EIA)」代表のメアリー・ライス氏は、タンザニア政府がゾウの直面する問題にいまだ本気で取り組もうとしていないと指摘する。その問題とは、中国人率いる多国籍犯罪組織と政府役人との癒着と不正である(タンザニア外務大臣は、政府役人が象牙の密輸に関わっていることを否定している)。

 EIAは、アフリカから中国などの国々(主にアジア)へ運ばれる違法象牙の流れを過去10年間にわたって調査している。(参考記事:「象牙と信仰」

エンバイロンメンタル・インベスティゲーション・エージェンシーのメアリー・ライス氏。(PHOTOGRAPH BY ENVIRONMENTAL INVESTIGATION AGENCY)
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 英国ロンドンの事務所でインタビューに応じたライス氏は、タンザニア政府が長年にわたり、行動を起こすに十分な情報を得ていたにもかかわらず、何の手も打たなかったと語る。

――タンザニアのゾウがこれほど大量に殺されているという発表を聞いてどう思いますか?

 劇的な減少率です。今もなお深刻な状態が続いていることを物語っています。

 ただ、過去10年にわたってタンザニアで起こっている問題を認識し、調査し、記録してきた人々にとっては驚くことではありません。これまで、国内外の非営利団体やジャーナリストたちが繰り返し報告し、明らかにしてきたことです。2009年には、タンザニア人ジャーナリストによるレポートも発表されています。

――天然資源観光省は、「行方不明」となっている1万2000頭のゾウに何が起こったのか「広範囲な調査を開始する」と発表しましたが、これについてはどう思いますか?

 この(2014年に行われた上空からの)個体数調査は、政府の手によって昨年末に行われました。今は6月です。もし原因究明をするというのなら、なぜいまだに行われていないのでしょうか?

 ゾウたちが隣国へ移動したというのは、あまり理にかなった回答とはいえません。もちろん、国境を越えて移住する動物たちはいますが、これほどの規模でということはまずありません。

 政府は、深刻な問題であることは理解しているでしょう。現場で大規模な人力を投入しているものの、密猟は止まらないのです。

2012年に、タンザニアとケニアから密輸され、香港で押収された象牙約4トン。(PHOTOGRAPH BY DALE DE LA REY, AFP/GETTY)
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――密輸ルートの上層にいる人物の証拠を掴むのが難しいというのも、問題のひとつなのでしょうか。

 そうは思いません。問題の多くは、手順に従ってやるべきことをやっていないというところにあります。2007年に私たちは初めて問題を明らかにし、政府へ知らせました。密輸を取り仕切る個人を特定し、どこで活動し、何に関わっているかなどについて集めた情報を提供しました。

 当時の環境大臣とも会い、密輸に関わっている人々を撮影したビデオを見せました。彼らの会話や、その内容が示す人物――密輸ルートに関与しているあらゆる人々についてです。

――誰が関わっていましたか?

 例えば輸送業務に従事している人々、それに野生生物局の内部で働く組織上層部の人間もいます。

 大臣は、ビデオを見て明らかに危機感を抱いたようです。この情報をどうするつもりかと聞かれたので、「政府がどう行動するかによります」と答えました。

 その結果、ゾウを保護動物リストから規制の緩いリストへ移すことを検討していたタンザニア政府は、この提案を取り下げました。政府が自分たちで始末をつける機会を得られたのだから、結果としてよかったのだと考え、私たちも情報を一般公開するのをやめました。

 ところが2009~2010年になってみると、状況は悪化してしまいました。

 そこで私たちも再検討し、今度こそ情報公開に踏み切りました。2010年3月に行われたワシントン条約締約国会議でのことです。

 当事国であるタンザニアとザンビアの法執行当局へ機密情報を提供していましたが、それと同じものを、ワシントン条約事務局にも提出しました。そして、何か変わるかどうか様子を見ることにしたのです。

2013年、セルース猟獣保護区に接するミクミ国立公園内を車で走る警備員たち。(PHOTOGRAPH BY DANIEL HAYDUK, AFP/GETTY)
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 2013年のワシントン条約会議が終了してみると、タンザニア政府があれほど約束していたにもかかわらず、ほとんど何の成果も見られませんでした。問題解決に向けた金銭的な支援も相当受けていたはずなのですが。

 そこで、タンザニアの状況を広く知らせるため、2014年に『バニシング・ポイント』と題された報告書を作成し、10年に及ぶ組織的な失策、汚職、乱用の実態を明らかにしました。

 彼らは独立して活動しているのではありません。地元民からの協力がなければ、あのようなやり方が成功するはずがありません。

――地元の役人たちでしょうか?

 密輸ルートの全段階においてです。タクシーの運転手から役人、税関や空港職員、運輸会社にいたるまで。そして、ひそかに密輸品を運んだり隠したり、保管する人々がいます。

 いずれの段階もタンザニア人の手を経ています。ですから、中国だけの問題ではなく、両国の共同作業なのです。けれども、最前線にいて最も高いリスクを負うのは、地元の人々です。


ジャーナリストのブライアン・クリスティが潜入した、中国などの象牙細工の現場。

――EIAの捜査内容を簡単に説明してください。

 映画ならば、最新機器片手に世界中を飛び回り、格好よく華やかなイメージがありますが、現実はそれとは程遠いものです。地道な努力を要し、時には家族と何週間も離れて、ひどい環境の中で寝泊りしなければならないこともあります。

――バニシング・ポイントが発表されてから6カ月が経ちましたが、あれからタンザニア政府は何か意義のある対応を見せたのでしょうか?

 公式に意義のある対応は何もありません。

 この状況をなんとか食い止めようと、現場で血のにじむような努力をしている善良な市民がいます。自分たちの資源に起きている事態を憂慮する心ある人々がいます。ところが、彼らの努力は体制によってことごとくくじかれ、失望に終わっているのです。(参考記事:「密猟される動物たち」

セレンゲティ国立公園は今でも観光客に人気が高いが、それもゾウがいなくなれば変わるかもしれない。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL MELFORD, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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文=Maraya Cornell/訳=ルーバー荒井ハンナ

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