はぐれ銀河を11個発見、故郷を追われた原理解明

放浪するコンパクト楕円銀河を11個発見

2015.04.24
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アンドロメダ銀河(M31)の中心部の右下に写っている輪郭のぼやけた丸い天体は、コンパクト楕円銀河M32だ。M32はM31の伴銀河だが、ほかの放浪するコンパクト楕円銀河と同様、激動の過去を持つのかもしれない。(PHOTOGRAPH BY R. GENDLER)
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 宇宙は放浪者でいっぱいだ。何十億という惑星や恒星が生まれ故郷を離れてさすらっているが、このほど、銀河がまるごと放浪者の仲間入りをした。

 4月24日付け『Science』誌に掲載された論文によると、コンパクトな銀河は、重力の作用によって故郷の銀河団からはじき出される場合があることが明らかになったという。

 コンパクト楕円銀河と呼ばれる銀河は、星の密度が高く、ボールのような形をしていることが多い。また、ほかの銀河に比べてかなり小さく、星の数はせいぜい数十億個である。私たちの銀河系は平均的な銀河だが、約1000億個の星からなる。

 コンパクト楕円銀河は、実は非常に珍しく、2013年までに30個程度しか見つかっていなかった。さらに、そのすべてが、大きい銀河団の中心付近の巨大銀河のそばにあった。

 ところが、2年前に発見されたコンパクト楕円銀河は、近くに大きい銀河が見当たらなかった。宇宙には、こうした「はぐれ者」銀河がほかにもあるのだろうか? それとも、この銀河だけがとんでもない変わり者なのだろうか?

 ロシアのシュテルンベルク天文研究所と米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターに所属するイーゴリ・チリンガリアン氏と、シュテルンベルク天文研究所とフランス惑星・天体物理学研究所に所属するイヴァン・ゾロツキン氏は、新しい研究で、放浪するコンパクト楕円銀河をさらに11個記録した。いずれも、最も近い銀河団から何百万光年も離れたところにある。

 チリンガリアン氏は、「生まれ育った銀河団から放逐された小さな銀河には、孤独な未来が待っているのです」と解説する。

 コンパクト楕円銀河は、はるかな昔に銀河どうしが極端に接近したときにできたと考えられている。何億年も前に、小さい銀河が大きい銀河の重力に引き寄せられ、外層部を剥ぎ取られた結果、コンパクトな裸の中心部だけが残ったのだ。

 放浪するコンパクト楕円銀河は、ほかの2つの大きな銀河との重力相互作用によって銀河間空間に放り出されたものである。宇宙で3つの天体が極端に接近するときには、最も軽い天体が銀河間空間に放り出される。同様の過程は、私たちの銀河系の中心付近でも、小さいスケールで起こると考えられている。銀河の中心部にある超大質量ブラックホールが、連星系の2つの星の一方をはじき飛ばし、他方を飲み込むのだ。

コンパクト銀河はどうやって生まれ故郷の銀河団を追われて放浪の旅に出るのかを図示した。左:コンパクト楕円銀河の進路に渦巻銀河が近づいてくる。中:侵入してきた銀河の重力作用を受け、コンパクト楕円銀河が軌道を変える。右:銀河団からはじき出され、侵入してきた銀河は銀河団の中心にある巨大銀河に飲み込まれてしまう。(ILLUSTRATION BY ANDREY ZOLOTOV)
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 「これは、銀河団からコンパクト楕円銀河をはじき飛ばすのと同じ現象が、異なるスケールで起きたものなのです」と、ゾロツキン氏は言う。

 研究チームは、今回の発見はダークマターの理解に役立つかもしれないと考えている。ダークマターはほとんどの銀河にあって、その安定を維持する役割を果たしているが、コンパクト楕円銀河にはないと考えられているからだ。

文=Andrew Fazekas/訳=三枝小夜子

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