21年後に巨大ブラックホールが衝突へ

至近距離を周回、重さは恒星100億個分

2015.04.27
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NASAのNuSTAR望遠鏡が撮影した衝突する2つの銀河。どちらの銀河も中心部に巨大なブラックホールがあるので、近い将来、ブラックホールどうしが激しい衝突を起こして、重力波を送り出すはずだ。(PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH/GSFC)
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 天文学者が想像する宇宙で最も激しい衝突現象は、2つの巨大ブラックホールどうしの衝突だ。この現象が目撃されたことはまだないが、このほど『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ(Astrophysical Journal Letters)』誌に掲載された論文によると、近いうちに見ることができるかもしれない。

 論文を執筆した米メリーランド大学の天文学者ティンティン・リュー氏らは、宇宙の端近くで周期的に増減する光が、2つの巨大なブラックホールの存在を知らせていると主張する。ブラックホールの質量は合わせて恒星100億個分にもなり、お互い非常に近い距離で軌道運動していて、あと20年ほどで衝突するかもしれないという。「本当だとしたら驚くべきこと」と、この研究に関与していないニューヨーク大学の理論天文学者アンドリュー・マクファディン氏は言う。

重力波検出のチャンス

 マクファディン氏が驚いたのは、巨大ブラックホールどうしが衝突するかもしれないという部分ではない。宇宙が若く、今日より小さかった時代には、銀河どうしの距離も近かったので、ブラックホールどうしの衝突は比較的よく起こったと考えられている。私たちの銀河系を含め、ほとんどの銀河は中心部に巨大なブラックホールを持っているため、銀河が衝突、融合する場合には、遅かれ早かれブラックホールどうしも融合する。

 アインシュタインの一般相対性理論によると、ブラックホールどうしが衝突するときには時空のさざ波(重力波)が発生する。物理学者は巨大な重力波検出器を建設していて、こうした装置で重力波をとらえることができれば、アインシュタインの理論の正しさが裏づけられることになる。

 今回の論文でマクファディン氏を驚かせたのは、近いうちにブラックホールどうしの衝突が起きて、重力波の発生を初めて観測できるかもしれないという部分である。リュー氏らが観測した天体は、PSO J334.2028+01.4075というクエーサーだ。クエーサーは中心部に超巨大ブラックホールを持つ銀河で、非常に小さい領域から強烈な光を発している。この強い光は、ブラックホールに落ち込んでいく膨大な量のガスが渦を巻いて円盤状の構造(降着円盤)を形成する際に、摩擦によって高温になり、発光することによって生じている。

 クエーサーの明るさはめまぐるしく変化するが、ふつうは、この変化はランダムだ。リュー氏らによると、PSO J334.2028+01.4075の光は周期的に増減していて、542日ごとに明るくなるという。

 このような周期的な光の増減は、お互いのまわりを軌道運動する一対のブラックホールの周囲を降着円盤が取り巻いていると考えればうまく説明できる、というのが研究チームの主張である。「なんらかの理由で、この降着円盤は非対称な形をしているため、ガスは片方のブラックホールに落ち込みやすくなっています」とリュー氏は言い、そのブラックホールが軌道を1回まわるたびに降着円盤と相互作用し、クエーサーをひときわ明るく輝かせると説明する。

衝突の現場を目撃できる可能性

 リューらが主張する542日という周期が正しいなら、2つのブラックホールは0.02光年しか離れていないことになる。これは、太陽から最も近いケンタウルス座アルファ星までの距離の約200分の1で、宇宙のスケールでは同じ場所にあると言ってよいほどだ。この見積もりが正しいなら、2つのブラックホールは約21年後に衝突するという。

 論文の共著者で、同じくメリーランド大学に所属するスヴィ・ゲザリ氏は「数カ月前に『Nature』誌に掲載された論文でも、クエーサーの変光を頼りに、近いうちに衝突しそうな巨大ブラックホールが発見されました」と言う。「けれども、私たちのブラックホールの方が面白いです。こちらの方が大きくて、距離も近いからです」

 アインシュタインの理論を検証する機会がこんなに早くやってくるなら理論家にとっては願ってもないことで、巨大ブラックホールの衝突に合わせて、新しい超高感度重力波観測施設の建設時期も早まるかもしれない。

 そんなにすぐに衝突するわけがないと考える天体物理学者もいる。先の『Nature』の論文の筆頭著者であるカリフォルニア工科大学の理論家マシュー・グレアム氏は、「彼らと同じ方法で分析すれば、私たちのクエーサーではわずか5年後にブラックホールの衝突が起こることになります。論文で融合時期に言及しなかったのは、その予想があまりにも不確実だと思ったからです。クエーサーの増光のメカニズムが解明されるまでは、どの段階にあるのかわからないからです」と批判する。

 リュー氏らは今後、長期の観測を行いたいと望んでいる。彼らはまた、PSO J334.2028+01.4075の光の変動が発見されるきっかけになったPan-STARRS全天サーベイの観測結果から、ほかの例も探し出したいと考えている。さらに、2021年に稼働する予定の大型シノプティック・サーベイ望遠鏡が完成して、より広く、より遠くの宇宙を観測できるようになる日を待ち望んでいる。

 「私たちの予想が正しいかそうでないかは、21年後に明らかになります」とガザリ氏は言う。「そんなに遠い未来のことではありません」

文=Michael D. Lemonick/訳=三枝小夜子

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