絶滅寸前のコククジラ、最長移動距離を樹立

9歳の雌バーバラ、太平洋を往復2万2511km

2015.04.16
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メキシコのバハカリフォルニア半島サンイグナシオ潟で深い潜水をはじめるコククジラ。(PHOTOGRAPH BY FLIP NICKLIN, MINDEN PICTURES/NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 絶滅が危ぶまれているコククジラの1頭が、ロシア沿岸からメキシコ沿岸まで太平洋を横断、往復する旅を成し遂げたことが明らかになった。172日間、2万2511kmの旅は哺乳類としては最長移動記録という。4月14日付け『バイオロジー・レターズ(Biology Letters)』誌に掲載された。

 毎年秋に米国カリフォルニア州沿岸を回遊するコククジラの集団は「北太平洋東部個体群」と呼ばれ、科学者による研究が進んでいる。コククジラにはもう1つ、ロシア沿岸に近縁の小さな集団があり、「北太平洋西部個体群」と呼ばれている。この謎めいた集団の追跡が始まったのは、つい最近だ。

 西部個体群は絶滅寸前で、長年、東部個体群から隔離されていると考えられていた。今回の研究は、そうした見方を覆す可能性がある(参考記事:フォトギャラリー:伊豆諸島で見つかった希少なコククジラ

 バーバラと名付けられた9歳の雌のコククジラは、2011年11月にロシアのサハリン島を出発し、メキシコのバハカリフォルニア半島サンルーカス岬まで行って戻ってきた。論文によると、バーバラは172日間に2万2511kmもの距離を移動したという。

 オレゴン州立大学海洋哺乳類研究所のブルース・メイト所長らは、西部個体群の回遊パターンを調べるために7頭のコククジラに衛星タグをつけた。

 7個のタグのうち、回遊を追跡できたのは3個だけだった。3頭のクジラはいずれもサハリンから東に向かい、うち2頭は東部個体群に合流して南下していた。残りの1頭につけたタグはアラスカ湾の半ばあたりのところで機能しなくなってしまったが、「クジラはもっと先まで泳いでいったはずです」とメイト氏は言う。

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新たに判明した事実

 メイト氏によると、カナダのブリティッシュコロンビア州沿岸とメキシコのバハカリフォルニア州沿岸では、以前から約30頭のコククジラが確認されていたという。ところが今回、バーバラが米国オレゴン州南部の沿岸で確認されたとき、このクジラは東部個体群と一緒にいた。

「ふつう、子クジラは母クジラに従って繁殖域から摂食域へと移動し、おとなになってもそのルートを回遊します」とメイト氏は言う。だとすると、西部個体群のコククジラが太平洋東部に姿を見せたということは、このクジラたちはここで生まれたのかもしれない。もしそうなら、西部個体群は隔離されているという従来の見方が覆される可能性がある。

全体像を求めて

 今回の研究は何を意味しているのだろうか。西部個体群の中に小さな東部個体群があるということだろうか。西部個体群は独立の集団ではなく、東部個体群の延長にすぎないのだろうか。

「これまでの遺伝学研究によれば両者は別々の集団ですが、もっと多くのデータを分析している研究チームがあるので、今は彼らの結果待ちです」とメイト氏は言う。

文=Jane J. Lee/訳=三枝小夜子

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