心と体の性が一致しない人、体の特徴からは男か女に分けにくい人。多様な性を科学の目で見ていくと、男と女の境目は、ぼやけてくる。

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曖昧になる男女の境界

心と体の性が一致しない人、体の特徴からは男か女に分けにくい人。多様な性を科学の目で見ていくと、男と女の境目は、ぼやけてくる。

文=ロビン・マランツ・ヘニグ/写真=リン・ジョンソン

 Eという仮名で取材に応じてくれた14歳の少女は、自分のことを「めちゃくちゃ中性的な」女の子だと思っている。ドレスを着るのは苦痛そのもの。好きなのはバスケットボールやスケートボード、テレビゲームだ。

 Eにとって、心と体の性が一致しない人を指すときに使う「トランスジェンダー」という言葉はしっくりこない。体に強い違和感をもっているわけではないが、「自分の感覚に合うよう、体を部分的に変えたい」、つまり月経や胸のふくらみはいらないし、目鼻立ちをくっきりさせて、ひげを生やしたいという。果たしてEはトランスジェンダーの男の子なのか、中性的な女の子なのか。それとも、伝統的な男女の役割に縛られたくないと思っているだけなのだろうか。

「トランスジェンダー」は10年で倍増

 一昔前なら、男の子っぽい遊びや服装を好む女の子は「おてんば娘」で片づけられただろう。ここ数年、トランスジェンダーという言葉が社会に浸透し、メディアがさかんにこの問題を取り上げるようになった。米国で行われた複数の調査では、公式にトランスジェンダーに分類された成人の数は約10年で2倍に増えたという。

 性別の表現が従来の文化的な規範に当てはまらない人を広く指す「ジェンダー・ノンコンフォーミング」の人も増えている。出生時に判定された性別に疑問をもつ小学生も増え、こうした子どもがいじめに遭ったり、性的暴行を受けたり、自殺を図ったりするリスクが極めて高いことが社会問題になっている。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2017年1月号でどうぞ。

編集者から

 当たり前のことだと笑われるかもしれませんが、「境界」という概念は人間がつくったものだということに、改めて気づかされました。考えてみると、たとえば陸と海の境界は地図上にあるだけで、自然の中に引かれているわけではありません。陸と海の間にあるのは、潮汐によって陸になったり海になったりする領域(いわゆる潮間帯)であり、決して1本の境界線ではありません。そして、その潮間帯と陸や海の境界もまた曖昧です。
 陸と海の関係に限らず、自然界にはもともと境界なんてないのかもしれません。男か女に分けにくい体をもって生まれてくる人も現実にいるわけですから、「性は明確な境界のない連続的な概念」という考え方も納得できます。性分化疾患やトランスジェンダーの人たちの悩みを解決するには、人間(あるいは社会や文化)がつくった性別の概念を、現実に合うように変えていくしかないのでしょう。
 人が性別に関する悩みを抱えていることは、ほとんどの場合、外見からはわかりません。特集に登場してくれた人たちの写真を見ていると、人と接するうえで、目に見えない相手の気持ちを想像することの大切さを教えられます。(T.F.)

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