特集ダイジェスト

米国とメキシコの国境沿いに築かれた壁やフェンスは二つの国を隔てるだけでなく、全米の世論を分断する存在となっている。

 米国南西部で40年近く撮影を続けてきたが、2004年に、スペイン語で「水」と書かれた大量の水が入れられた青い樽に出くわした。意外に感じたので、思わず撮影したが、それ以来、樽のことが忘れられないでいた。

 米国とメキシコを隔てる3145キロの国境沿いにはその後、壁や監視塔が次々と建設され、警備が厳しくなっていった。そして2009年、私は国境地帯を本格的に撮影し始めた。そのなかで、あの樽が人道支援グループによって置かれた“給水所”だと知る。国境を越えて米国に来る不法移民が脱水症にかかったり、死亡するのを防ぐためだ。

 これらの写真は、政治と文化、自然が絡み合って生まれた。問題があまりに複雑すぎて、私は答えを持ち合わせていないが、私の作品を見て、こうした壁が何を意味するのか真剣に考えてもらえればうれしい。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2017年10月号(amazon)でどうぞ。

編集者から

 トランプ大統領の登場で一躍脚光を浴びることとなった、米国とメキシコ国境の壁。実は古くて新しい問題なんですね。この特集では、なんとも中途半端な壁やフェンスが登場します。本気度はどれほどのものなのでしょう? 写真家が言うように、不法移民の米国での就労や麻薬の流入といった問題は、壁を建てたとしてもなくならないでしょう。それはメキシコ人の問題というより、米国人が国内で解決しなければいけない問題なのですね。(S.O.)

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