過激ともいえる麻薬撲滅運動が繰り広げられるフィリピン。闘いで多くの命が奪われ、弔いが日常となりつつある。

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フィリピン 麻薬戦争の暗い影

過激ともいえる麻薬撲滅運動が繰り広げられるフィリピン。闘いで多くの命が奪われ、弔いが日常となりつつある。

文=アウロラ・アルメンドラル/写真=アダム・ディーン

 2016年11月、テレビで夕方のニュースを見ていたリック・メディナは画面に映し出された遺体を見た瞬間、それが23歳の息子エリカルドだとわかった。フィリピンの首都マニラの閑静な大通りに横たわる犠牲者はうつ伏せになっていたし、身元も伝えられなかった。それでも父にはわかったのだ。

 翌朝、エリカルドの姉ジョイは遺体安置所に向かった。そこには8人の遺体が並んでいた。全員が同じ方法で殺害された。梱包用の粘着テープで頭をぐるぐる巻きにされ、胸と首にはアイスピックで執拗に刺された痕がある。エリカルドの遺体には「麻薬の売人」と書かれたボール紙が置かれていた。父親によると、息子は麻薬に手を出したことなどないというが、ジョイはそれを否定した。いずれにしろ、殺し屋たちがむごい罰を下したというわけだ。

 メディナ家の苦しみは、ここ数カ月、フィリピンの何千という家族が味わってきたものだ。2016年6月に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領は密売人を殺して、麻薬犯罪を撲滅しようとしている。警察の統計では、ドゥテルテの就任後の半年で、少なくとも2000人が警察によって殺され、さらに4000人が何者かによって命を奪われたという。麻薬密売人を街から根絶するまで闘いを終わらせないと、ドゥテルテは公言している。

 フィリピンでは、死者が増えるにつれ、死者を弔う儀式が日常の光景となりつつある。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2017年7月号(amazon)でどうぞ。

編集者から

 ドゥテルテ大統領の暴言は勢いが少しなくなってきたようですが、国内に山積する課題におわれているからでしょうか。ここで紹介した麻薬撲滅運動に加え、南部の反政府勢力との戦いも新たに加わっています。いずれも、多くの人命が犠牲になる可能性のある事態です。この短い記事を通して、ニュースではあまり伝えられることのない、社会の雰囲気を感じ取ってもらえたらうれしいです。(S.O.)

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