パキスタン北部の山岳地帯で伝統的な暮らしをしてきた少数民族の村でも、最新の技術と教育の恩恵を受けた若者たちが、新たな時代を築きつつある。

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パキスタン 辺境の地で

パキスタン北部の山岳地帯で伝統的な暮らしをしてきた少数民族の村でも、最新の技術と教育の恩恵を受けた若者たちが、新たな時代を築きつつある。

写真・文=マチュー・パレイ

 パキスタン北部のゴジャール地方は、アフガニスタンと中国の国境に程近い、険しい峰々に囲まれた地域だ。そこには山岳少数民族ワヒの人々が、約2万人暮らしている。

 彼らはイスラム教のなかでも穏健な、イスマイル派の信徒だ。2011年に起きた米国同時多発テロ以来、観光客がすっかり来なくなったと、ガイドのカリム・ジャンは言う。パキスタンというだけで、テロや暴力と結びつけられ、そのイメージを払拭できていないのだ。

 この地方は長いこと外界から隔絶されてきたが、技術の進歩に伴ってその壁が取り払われつつある。四輪駆動車でなければ通行できなかったカラコルム・ハイウェーが改修されると、教育熱心なイスマイル派の指導者に促され、村の若者たちは南部の都市の学校で学ぶようになった。そして夏休みになると、流行の服に身を包んで村へ戻って来るのだ。

 パスー村で若い男性たちと話をした。ブランドもののTシャツにジーンズ姿の若者もいれば、昔ながらの白いズボンに丈の長いシャツというスタイルの者もいた。

 若者の一人、イサル・アリは、村の生活が変わりつつあるのは、教育の影響が大きいと認めながらも、「これも関係しています」と言って携帯電話を指さした。スマートフォンやモバイル通信のネットワークが、彼らの伝統や日常生活に変化をもたらしている。その一例が男女のつき合い方だ。ごく最近まで縁談は親が進め、当人同士は事前にほとんど会ったことがないというのが普通だった。だがアリは意中の女性と携帯電話のメールを介して交際を深めた後に、両親に結婚の承諾を得た。「男女が一緒にいられることは、今でも尊いことだと感じます。携帯電話があってもなくても、この伝統は守っていかないと」とアリは語った。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2017年4月号でどうぞ。

編集者から

 パキスタンで携帯電話は、恋愛結婚を実現させるなど、いい意味で伝統を打ち破る心強い存在となっているようです。「相手を知りたい」という、本来の目的にかなった使い方がされているという印象を受けます。これに対し、日本では、就活事情をめぐるニュースで「採用の連絡なのに、学生が携帯電話に出てくれない」と、企業の人事担当者が嘆いていたのを思い出しました。「知らない番号には出ない」のは半ば現代の常識となりつつあるようで、学生を一方的に批判もできませんが、コミュニケーション用のツールでありながら宝の持ち腐れ状態とは、なんとも皮肉なお話です。この記事に登場するパキスタンのゴジャール地方のような地域では、このまま“ピュア”で“ホット”なツールとして、携帯電話が使い続けられることを願わずにはいられません。(編集H.O.)

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