米国アラスカ州で、先住民ユピックの祖先が残した貴重な遺物の数々が失われようとしている。温暖化の影響による、凍土の融解が原因だ。

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アラスカ先住民 解け出した氷の下の歴史

米国アラスカ州で、先住民ユピックの祖先が残した貴重な遺物の数々が失われようとしている。温暖化の影響による、凍土の融解が原因だ。

文=A・R・ウィリアムズ/写真=エリカ・ラーセン

 遠い昔の悲劇は、時に現代の研究者に貴重な発見をもたらす。考古学者たちは米国アラスカ州の南西岸に位置するヌナレクで、これまでに2500点以上の遺物を掘り出してきた。食器などの日用品もあれば、儀式に使われた木製の仮面、セイウチの牙でできた入れ墨用の針、カリブーの歯を連ねたベルトなどの珍しい物もある。1660年頃から凍土に埋もれていたため、どれも驚くほど保存状態がいい。

気候変動が引き起こした戦い

 英国のアバディーン大学に籍を置き、調査隊を率いる考古学者のリック・クネヒトは、この地で起きた惨劇と、先住民のユピックの人々が伝える昔話との間には関連があるとみている。ユピックの人々は、歴史家が「弓矢の戦争」と呼ぶ時代の記憶を語り継いできた。ロシアの探検家が1700年代にアラスカに到達する以前、ユピックの共同体の間では血みどろの戦いが繰り広げられていたという。ヌナレクの遺跡は、数世代にわたるこの凄惨な時代の考古学的証拠と確たる年代を、初めて明らかにした。

 それらの戦いは気候変動の結果だったと、クネヒトは考えている。ヌナレクに人々が住んでいたのは、地球が550年間にわたって冷え込んだ小氷期のことだ。アラスカが最も寒冷化した1600年代は悲惨だったに違いない。おそらく食料の略奪も頻繁に起きていただろう。

「気候が急激に変化するときには、食料が手に入る時期が大幅にずれることがよくあります」とクネヒトは言う。「小氷期や現代のように、極端な気候の変動が起きると、適応が追いつかなくなることもあるのです」

 現在、そうした異常気象が、ヌナレクの遺跡を消し去ろうとしている。

【動画】アラスカの村の暮らし

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2017年4月号でどうぞ。

編集者から

 昔ながらの狩猟や採集の生活を送るユピック族。「この村では太っていることはいいことなんです。ちゃんと食べている証拠ですから」という村人の言葉が文中に出てきますが、同じ北極圏の先住民でも事情は少し違ったりするようです。椎名誠さんの連載で、急速な肥満が目に余るカナダの先住民に出会った話が出てきました(「椎名誠の奇鬼驚嘆痛快話」)。
 肥満の原因は、村にできた巨大スーパーマーケット。甘いものやすぐに食べられる加工食品に味をしめ、もうアザラシを仕留めるのは面倒、となった結果なんだとか。異常気象がこれ以上食べ物の入手を困難にしてしまったら、ユピックの村にスーパーができる日もそう遠くはないかも? 「この村では太っていることは…」の次に来る言葉が変わらないことを願います。(編集H.O.)

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