歩く代わりに車に乗り、記憶をネット検索に頼り、遺伝子の編集技術を手にした現代人。人間はこの先、科学技術によって“進化”していくのだろうか?

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テクノロジーで加速する人類の進化

歩く代わりに車に乗り、記憶をネット検索に頼り、遺伝子の編集技術を手にした現代人。人間はこの先、科学技術によって“進化”していくのだろうか?

文=D・T・マックス/イラスト=オーウェン・フリーマン

 スペインのバルセロナで、サイボーグに会った。その体には、機械が組み込まれている。名前はニール・ハービソン。見た目は地元のおしゃれな若者といった印象だが、一風変わった特徴が一つ。金髪頭から、黒いアンテナが延びているのだ。

 ハービソンは34歳。「1色覚」というまれな先天異常で、色をまったく認識できない。そんな彼の世界を変えたのが、黒いアンテナだ。後頭部から突き出て、頭上を通り、額の上あたりまで延びている。

 白黒の世界しか見えなくても不自由に感じたことはないと、彼は話す。「遠くの物もよく見えるし、色に気をとられないので、物の形を覚えるのは得意ですよ」。それでも、色彩のある世界がどんなものか、とても興味があったという。ハービソンは、10代後半にふと思いついた。色を音として識別できないだろうか、と。手作りの装置で試行錯誤を繰り返し、20代初めにようやく理解ある外科医を見つけて、頭部に装置を埋め込む手術を受けた。

肉眼では見えない光もキャッチ

 アンテナの先端に付いた光ファイバーセンサーが、彼の視野に入る光の波長をとらえ、頭に埋め込まれたマイクロチップがそれを振動に変換して、後頭部に伝える。骨の振動が音となり、頭蓋骨がいわば第三の耳として機能する仕組みだ。この方法で彼は、私のブレザーの色を紺色だと当てた。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2017年4月号でどうぞ。

編集者から

 だんだん年をとって物覚えが悪くなったからか、電子辞書を引いたり、情報をインターネットで検索したりすることが増えてきました。これはつまり、コンピューターを使って自分の記憶力を拡張しているということです。きっと私も、「サイボーグ」になりつつあるのでしょう。このまま何も考えずに生きていけば、サイボーグ化はどんどん進行していきそうです。生身の人間で居続けるためには、テクノロジーに頼りすぎない生活を普段から心がけなければ、と感じました。
 この特集では過去や未来の話を扱っているので、本誌には珍しく写真が一枚も使われていません。でも、本文冒頭に登場するニール・ハービソンがどんな姿をしているのか、知りたい方も多いでしょう。もちろんネットで検索すれば写真はすぐに見つかるのですが、頭を使うためにも、まずは少し時間をかけて、文章から彼の姿を想像してみるのがいいかもしれません。かく言う私は、この特集を編集するとき、真っ先に彼の写真をネットで検索してしまいました。もう生身の人間には戻れないかも。(T.F.)

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