アルコールと人間の縁は古く、その始まりは先史時代とみられている。酒は誕生以来、人類の文化に深く関わり、芸術や言語、宗教の発展に寄与してきた。

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酒と人類 9000年の恋物語

アルコールと人間の縁は古く、その始まりは先史時代とみられている。酒は誕生以来、人類の文化に深く関わり、芸術や言語、宗教の発展に寄与してきた。

文=アンドリュー・カリー/写真=ブライアン・フィンク

 現代人にとって、酒は魅力的な飲み物だ。酒に含まれるエタノール(アルコールの一種)には、脳内でセロトニン、ドーパミン、エンドルフィンなどの放出を促進する働きがある。つまり、酒を飲むと不安が和らぎ、楽しい気分になるのだ。さらに最近の研究によれば、人類の歩みのなかで、酒は極めて重大な役割を果たしてきた可能性があるという。

人類の祖先が木から下りた理由

 樹上に暮らし、果実を食べていた人類の祖先にとって、エタノールにはまた別の魅力があったはずだ。特有の匂いは果実のありかを教えてくれるし、熟して腐りかけた果物は消化が容易で、カロリー源として効率がいい。エタノールの殺菌作用のおかげで、有害な病原菌が繁殖しにくい利点もある。

 やがて、熟して地面に落ちた果実を好む霊長類が出現し、進化史の新たなページを開いた。「私たちの遠い祖先である類人猿が、森の地面に落ちて自然に発酵した果実を好んで食べるようになりました。それがすべての始まりです。後の飲酒につながる進化は、実ははるか昔に起きていたのです」。米国ダートマス大学の自然人類学者ナサニエル・ドミニーはそう話す。木から下りた霊長類は、新たな食料を見つけたのだ。

定住も農耕も酒のためだった?

 トルコ南東部にあるギョベックリ・テペ遺跡では、先史時代に訪れた別の転換点をめぐって、考古学者が調査を続けている。石器時代に狩猟と採集の生活をしていた人類は、やがて定住して農耕を始めた。この人類史上の大事件にも酒が関わっていたのではないか。そんな大胆な仮説も飛び出している。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2017年2月号でどうぞ。

編集者から

 特集に登場する、ある研究者の言葉を借りれば、人類はいわば「ビールを飲むために木から下りてきた」とか。私たち人間の進化の歩みや、文明・文化の発展に、酒は、これまで考えられてきた以上に重大な役割を果たしてきたのではないか―。世界各地で見つかったさまざまな証拠から、そんな説が浮上していたとは知りませんでした。考古学の発見から遺伝子の変異まで、初めて知る事実も多く、酒をめぐる壮大なスケールの物語に、わくわくしました。
 また、記事に出てくる古今東西の酒にも興味が尽きません。古代メソポタミアのビール、インカ帝国の時代から伝わる南米の醸造酒「チチャ」、中央アジアの遊牧民の馬乳酒…。なかでも気になるのが、古代ローマ風のワインです。スパイスのフェヌグリークやアヤメ、海水なども風味づけに使ったというのですが、いったいどんな味がしたのでしょう?(H.I.)

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