自動車用のタイヤ需要がふくらみ、ここ数十年で天然ゴムの巨大産地となった東南アジア。現地では貧困が解消される一方、生態系の破壊が進んでいる。

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ゴム景気で変わるアジア

自動車用のタイヤ需要がふくらみ、ここ数十年で天然ゴムの巨大産地となった東南アジア。現地では貧困が解消される一方、生態系の破壊が進んでいる。

文=チャールズ・C・マン/写真=リチャード・バーンズ

 ゴムは150年以上も前から、世界の政治と環境に知られざる影響を及ぼしてきた。機械の可動部分を連結し、保護するゴムは、機械を作る鉄、機械を動かす化石燃料と並んで、工業化に必要な三つの資源の一つだ。

 ゴムと聞くと、合成ゴムを連想する人が多いかもしれない。だが世界で生産されるゴムの4割以上は天然ゴムが占め、そのほとんどがパラゴムノキの樹液から作られている。合成ゴムは安価だが強度や柔軟性で劣るし、振動への耐久性も天然ゴムより低い。そのため、コンドームや手術用の手袋、航空機のタイヤなど、破損が深刻な事態を招く製品には、もっぱら天然ゴムが選ばれてきた。

需要増大でアジアの森林がゴム園に

 現在ゴムノキが栽培されている主な地域は、気候とインフラの両面で条件を満たす東南アジアにほぼ限定されている。世界経済の浮き沈みにかかわらず、ゴムの需要は高まる一方で、東南アジアのゴム産地にゴールドラッシュ並みの活況をもたらしてきた。ゴム景気のおかげで多くの人が貧困から抜け出し、豊かさを手に入れている。

 過熱するゴム産業は、経済以外の面にも波紋を投げかけている。米国ハワイ州にある研究機関のジェファーソン・フォックスによると、東南アジアで起きている環境の変化は、「人類史上、最速にして最大級の規模」だという。中国、ベトナム、ラオス、タイ、カンボジア、ミャンマーでは、ゴム農家が森林を伐採し、ひたすらゴムノキだけを植えている。その結果、世界でも有数の多様性を誇る自然が単一栽培(モノカルチャー)の農地に取って代わられ、生態系の基本的な機能が脅かされているのだ。単一栽培は生産性は高いが、脆弱だ。ゴムも例外ではない。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2016年1月号でどうぞ。

編集者から

 ゴム製品は私たちの身近にあふれていて、もしなくなれば日常生活に大きな支障をきたすでしょう。そんな天然ゴムの発展の歴史と、いま生産地で起きつつある問題が細かく網羅された記事で、多くの人が興味を引かれる内容だと思います。
 特に、ゴムノキが樹液を生産するのに大量の水を必要とすることは初めて知りました。巨大産地である東南アジアでも、いずれはゴム農園が水不足を招き、さらには生態系も脅かすでしょう。
 記事内では生態系とゴム栽培の共存をめざす取り組みが紹介されていますが、資本主義が続く限り、問題は根本的には改善されないのではないかと、考えさせられました。(編集M.N)

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