「きっと治る」と信じれば、偽の薬や手術で病気が治ることもある。そのとき体内では何が起きているのか? 人間の心と体の不思議な関係を探る。

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信じる者は癒やされる

「きっと治る」と信じれば、偽の薬や手術で病気が治ることもある。そのとき体内では何が起きているのか? 人間の心と体の不思議な関係を探る。

文=エリック・バンス/写真=エリカ・ラーセン

 本来は薬効をもたないはずのプラセボ(偽の薬)が効果を示す、いわゆる「プラセボ効果」は長年知られてきた現象で、新薬の臨床試験では比較対照のために利用されてきた。そんなプラセボ効果が今、人間の心と体のつながりや、「信じる」ことと実際の体験を仲立ちする神経化学のメカニズムを探るための有力な手がかりとして、注目されつつある。

 高価なプラセボは安物より効き目があるし、名の通ったブランド薬の容器入りなら、後発のジェネリック薬を名乗ったプラセボよりも効きやすい。偽の錠剤より偽の注射がいいし、偽の手術はもっとよく効く傾向があるようだ。

「偽の薬」と知っていても効く

 驚いたことに、たとえ患者がプラセボだと知っていても、こうした偽の薬や治療は効果を発揮する場合があるという。2010年に米ハーバード大学医学部のテッド・カプチャクらが報告した論文は、今ではよく知られている。カプチャクらは、過敏性腸症候群の患者に21日間プラセボを服用させた。あらかじめ偽薬であることを伝え、服用後にも改めて念押ししたにもかかわらず、偽薬を与えられた患者では、何の治療もしなかった対照群に比べて、症状の著しい改善が認められたのだ。

【動画】患者が抱く期待を生かす伝統療法は、古今東西で数多く行われてきた。ペルーのアシャニンカ族は、薬草を熱して、その湯気や煙を治療の儀式に使う。儀式を執り行うのは11歳の少女ミルシラ・プラド・ピンターヨだ。治療後にミルシラは薬草の葉を調べて効き具合を判断し、必要ならさらに別の薬草を処方する。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2016年12月号でどうぞ。

編集者から

「プラセボ効果」という言葉は知っていましたが、「“病は気から”の逆だろうか」などと、ぼんやりイメージしていた私にとって、この記事は驚きの連続でした。興味深い研究や事例がいくつも紹介されていますが、とりわけ驚いたのは、偽の手術を受けただけなのに、パーキンソン病の症状が目覚ましく改善したというケースでした。
「きっと効果がある」と期待することで、脳内の「薬局」から薬効をもつ物質がもたらされるとは…人体には、すごい力が備わっているんですね。そのパワーをうまく引き出す方法が確立されれば、いろいろな可能性が開けそうです。とりあえず、処方された薬は「これ、絶対よく効くすごい薬だから」と信じて飲もうと思いました。(H.I.)

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