激しい内戦の終結から7年。スリランカは今、数万人にのぼる国内避難民と行方不明者という重い課題の解決に、ようやく動きだそうとしている。

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スリランカ 癒えぬ内戦の傷痕

激しい内戦の終結から7年。スリランカは今、数万人にのぼる国内避難民と行方不明者という重い課題の解決に、ようやく動きだそうとしている。

文=ロバート・ドレイパー/写真=エイミー・ビターリ

「自分の土地が戻ってくるかどうかは、わかりません」と話すのは、スリランカ北部に暮らす46歳のタミル人女性だ。1990年に土地を軍に接収され、以後はむさ苦しい避難民キャンプで暮らしている。「軍は私の土地にホテルを建てました。収益が上がっているのに、すんなり返すと思いますか?」

 ご主人は? 私の問いに、女性は一瞬返答に詰まった。「8年前にいなくなりました。白いバンで連れて行かれたんです」

白いバンで連れ去られたタミル人の男性たち

 北部のマンナル島で漁師をしていた別の男性も、ある日オートバイで出かけたまま戻ってこなかった。漁に出たのかと家族は思っていたが、数日後にオートバイだけが発見された。漁師の妻は警察に届け出たが、「何かわかったら知らせる」と言われたきりだ。マンナルの路上でタミル人の男性たちが次々と姿を消している。そんな話がその後、彼女の耳に入ってきた。公衆の面前でさらわれ、無地の白いバンに押し込められたという目撃談もあった。

 スリランカでは、多数派のシンハラ人を中心とする政府軍と、反政府勢力「タミル・イーラム解放のトラ」(タミルのトラ)の間で26年にわたる内戦が続いた。2005年に就任した強硬派のマヒンダ・ラジャパクサ大統領は、タミルのトラとの対決姿勢を強め、徹底的な攻撃を展開。2009年5月中旬までにはタミルのトラの最後の残党を一掃し、内戦はようやく終結したが、死者は最大で10万人ともいわれている。

 国連は2015年までに行った推計として、タミル人の行方不明者が1万5000人以上という数字を発表した。スリランカ国内では、この数字は少なすぎるという見方もあった。ラジャパクサ政権は、行方不明者は国外へ逃げたのだと主張したが、それを裏づける根拠は何一つ示されなかった。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2016年11月号でどうぞ。

編集者から

 26年間にわたる内戦の終結から7年。スリランカについては、観光や経済関連の明るい話題に触れる機会が少しずつ増えてきたように感じていました。この国もようやく平和を取り戻し、復興の道を歩んでいるのだろうと思っていたのですが、今回の記事で、北部に暮らすタミルの人々が置かれた厳しい現実を初めて知り、衝撃を受けました。新政権がこの問題に向き合おうとする動きを見せていることは、せめてもの救いですが…。一日も早く、本当に平和な日々が訪れることを願っています。(H.I.)

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