太平洋北東部で、水温が異常に高い海域「暖水塊」が出現し、生物の大量死などの異変をもたらした。それは未来の海が直面する悲劇の前兆なのだろうか?

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太平洋 不吉な熱い波

太平洋北東部で、水温が異常に高い海域「暖水塊」が出現し、生物の大量死などの異変をもたらした。それは未来の海が直面する悲劇の前兆なのだろうか?

文=クレイグ・ウェルチ/写真=ポール・ニックレン

 ここ数年、北米大陸の西岸沖の海域では、海洋生物の死が目立つようになっていた。カリフォルニア州からアラスカ州に至る各地の潮だまりでは、何百万匹ものヒトデが死んだ。ウミガラスやウミスズメなど数十万羽の海鳥が死に、海辺に打ち上げられた。カリフォルニア州では、餓死するアシカが例年の20倍になった。アラスカ州のホーマーで研究者がそりにラッコの死骸を積んでいるのを目にしたが、その数は1カ月で79頭を数えたという。2015年末までに、アラスカ湾西部で死んだクジラの数は、実に45頭に達した。

【動画】アラスカの海辺に、苦しそうに横たわるラッコ。2015年には一帯で300頭以上のラッコが死んだ。大量死の原因としては、太平洋で発生した暖水塊や、有毒な藻類の大量発生との関連が疑われている。(解説字幕は英語です)

巨大な暖水塊が太平洋に出現

 山火事が力のない生き物を葬り、森の再生に向けて道を切り開くように、生物の大量死は自然の摂理ともいえる。だが各地で起きた生物の死には、一つの共通点があった。いずれも北米西岸の海水温が、観測史上最も高い値を記録した時期に起きているのだ。

 アラスカ湾では2013年末から、「暖水塊」と呼ばれる水温の高い海域が出現。そこに高気圧が居座ったことで、通常なら海面の熱を吹き飛ばすはずの嵐が起こらず、熱を蓄えたまま暖水塊は成長し、北米西岸沿いに広がっていった。海水温は、場所によっては平年より4℃以上高くなり、一部では観測史上最も高い値を記録した。この暖水塊は、最盛期にはメキシコからアラスカまで広がり、その面積は米国の国土面積に近い約900万平方キロにまで達した。

 そして2013年から16年の初めにかけて、北米西岸の海域では生物の分布に異変が生じ、有毒な藻類が長期にわたって大発生するなど、かつてない異常な事態の数々に見舞われたのだ。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2016年9月号でどうぞ。

編集者から

 海水温の上昇による異変。その最も人目を引いた事例として本特集で取り上げられているのが、やせて病気になり、海辺に流れ着いたアシカの子たちの話です。直接的な原因は母親が授乳を早々に切り上げたことにあるといわれていますが、その背景には、大量発生した藻類の毒の影響による「記憶障害」があるのではという報告が出ています。それって、厳しい野生の世界で、自分がいるところや、やっていることがわからなくなってしまうということ!? ぎょっと思った方は、こちらのニュースもぜひどうぞ。(H.O.)

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