生物の遺伝情報を思い通りに改変できる「ゲノム編集」技術。難病の治療など、無限の可能性を秘めた新技術だが、その使用への懸念もある。

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生命を自在に変えるDNA革命

生物の遺伝情報を思い通りに改変できる「ゲノム編集」技術。難病の治療など、無限の可能性を秘めた新技術だが、その使用への懸念もある。

文=マイケル・スペクター/写真=グレッグ・ジラード

 昨年ブラジルで大発生し、今も感染が拡大しているジカウイルスは、さまざまな神経障害を引き起こすようだ。胎内で感染した新生児の小頭症もその一つ。頭が異常に小さく、脳の発達が遅れるまれな先天性障害である。

 蚊の遺伝子を操作して、感染症を媒介しないようにできないか。米カリフォルニア大学アーバイン校の分子遺伝学者アンソニー・ジェームズはこの課題に取り組んできたが、おおむね理論的な研究にとどまっていた。だが、CRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)と呼ばれる革新的な遺伝子改変技術と、特定の遺伝子を子孫に伝えやすくする「遺伝子ドライブ」という技術の登場で、事態は一変する。両者を組み合わせることで、理論はにわかに現実味を帯びてきた。

 クリスパーを使えば、ヒトを含めたほとんどの生物のゲノム(全遺伝情報)を迅速かつ正確に、望み通りに編集できる。DNAの部分的な書き換えや削除を容易にする、まったく新しい道具を人類は手に入れたのだ。

難病治療への応用に期待

 クリスパーというゲノム編集技術が登場したおかげで、ここ3年ほどで生物学は様変わりした。すでに世界中の研究者が、この技術を利用して遺伝性の難病である筋ジストロフィーや嚢胞性線維症、あるいはB型肝炎といった病気の予防や治療の研究を進めている。クリスパーでエイズ患者の細胞からウイルスを消滅させる実験も行われ、将来的にはエイズを完治させることも夢ではなくなった。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2016年8月号でどうぞ。

編集者から

「ゲノム編集」という言葉は聞いたことがあったのですが、具体的にどんな技術なのかは、今回の特集を担当して初めて理解できました。遺伝子組み換えとの違いや応用例などがわかりやすく書かれていますので、理科が苦手な人もぜひ読んでみてください。なにしろ、CRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)を開発したジェニファー・ダウドナ氏とエマニュエル・シャルパンティエ氏という二人の女性研究者は、2015年にノーベル賞候補とも言われていました。「ゲノム編集」や「クリスパー」という言葉を見聞きする機会は今後増えてくると思います。今回の特集で予習しておけば、きっとどこかで役に立つでしょう。(T.F.)

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