麻薬密売をめぐる抗争の舞台となり、かつては世界一危険といわれた米国との国境の街、シウダー・フアレス。今では穏やかな暮らしが戻りつつある。

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メキシコ 悪夢から抜け出す街

麻薬密売をめぐる抗争の舞台となり、かつては世界一危険といわれた米国との国境の街、シウダー・フアレス。今では穏やかな暮らしが戻りつつある。

文=サム・キノネス/写真=ドミニク・ブラッコ2世

 米国との国境沿いにあるメキシコ北部の都市、シウダー・フアレス。ここサン・アントニオ地区はかつてスラム街だったが、今はコンクリート・ブロックの家が立ち並ぶ住宅街になっている。

 2008~12年には、フアレスは世界で最も危険な都市として知られていた。3700人以上が銃で殺された年もある。誘拐や恐喝をしても罰せられず、国内の盗難車の4分の1はこの街で盗まれるという無法地帯だった。

フアレスに平和が戻ったわけ

 彼らがおびえて家にこもるのをやめ、以前のようにのびのびと暮らせるようになったのはなぜだろう。少なくともここフアレスでは、民意が政治を動かした。犯罪を取り締まる法制度の強化や、自治体への投資を目指そうとする方向へと働いたのだ。そして、規律を取り戻した警察官、逃げ出さずに闘う事業者、硬直化した官僚組織に抵抗して改革の先頭に立つ政治家といった、予期せぬヒーローたちが生まれた。

 多くの客でにぎわう花屋で、店主のクラウディア・サウシードから話を聞いた。かつて店は彼女が一人で切り盛りし、夫はほかの仕事に就いていた。ゆすり屋が毎週取り立てるみかじめ料100ドル(フアレスでの平均的な週給)の足しにするためだ。

 市当局の推計では、2010年までにゆすり屋に脅されて金を支払っていた事業者の数は約8000にのぼっていた。その翌年、カルロス・サラスがチワワ州の検事総長に就任すると、州警察に恐喝取締部隊が創設された。

 それまでは多くの犯罪が処罰を免れていた。「手抜き捜査どころか、そもそも捜査などされていなかったのです」と、当時の取締部隊の監督官で、現在は市の警察長を務めるセザール・ムニョスは語る。「犯罪事件が発生すると、警察官たちは署内で隠れていました」

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2016年6月号でどうぞ。

編集者から

 メキシコの麻薬戦争をテーマにした映画や書籍、テレビのドキュメンタリーなどを最近よく目にします。政府も警察も機能しないなか、「昨日の友は今日の敵」という環境下で生きる人々。その生活は、われわれ日本人の想像をはるかに超えています。この特集の舞台となったシウダー・フアレスは、運よく悪循環から脱することができそうですが、その余波を受けて、ほかの地域で麻薬取引や抗争が激化しているという話も聞こえてきました。そんなメキシコの実情を取材してきたジャーナリスト、丸山ゴンザレスさんのお話が興味深い! インタビューはWebナショジオで公開中です。特集の背景情報としてもぜひご一読を。(H.O.)

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