剥製にすれば、絶滅した動物でさえ、いきいきとした姿で後世に残すことができる。だがそれが、野生の動物たちを守ることにつながるのだろうか?

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剥製 沈黙の動物たち

剥製にすれば、絶滅した動物でさえ、いきいきとした姿で後世に残すことができる。だがそれが、野生の動物たちを守ることにつながるのだろうか?

文=ブライアン・クリスティ/写真=ロバート・クラーク

「これは違法でしょ!」
 激怒した女性が指さしているのは、ニシローランドゴリラの剥製だ。その指の毛を、剥製師のウェンディ・クリステンセンが整えているところだった。「私はルワンダにいたことがあるの」と女性が言う。「ゴリラは保護の対象よ!」

 堂々とした風貌のクリステンセンは、自分を非難する相手に向かって、穏やかな口調でこう説明した。このゴリラはサムソンという名前で、死ぬまでの30年間、米国ウィスコンシン州にあるミルウォーキー郡立動物園の人気者だったのだと。それを聞いて女性は謝罪したが、クリステンセンが次に発した言葉にあっけにとられた。この剥製はサムソンの生きた証しではあるが、本物のゴリラから取った素材は一つも使われていないというのだ。

ゼロから作る新しい時代の剥製

 ミルウォーキー公立博物館のクリステンセンは「再現」という手法を用いて、サムソンをよみがえらせようと提案していた。これは通常の剥製とは似て非なる手法で、剥製にしようとする動物やそれと同じ種の皮や毛などを用いずに作っていくものだ。サムソンの死から25年が経過した2006年、クリステンセンはこのゴリラの分身を、ゼロから作り始めた。

 クリステンセンはまず、石膏でかたどったサムソンのデスマスクと数千枚にのぼる写真を使って、シリコン製の顔面を作った。ゴリラの骨格のレプリカと体毛(ヤクの毛と人工毛を混ぜて使用)を専門業者に発注したら、次は手の制作だ。米国のフィラデルフィア動物園で飼育されているゴリラの手の型を取らせてもらい、シリコンを使って指紋まで再現した。目の周りには、市販のつけまつげを植え込んだ。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2016年4月号でどうぞ。

編集者から

「剥製」と言われて私が思い出すのは、「博物館」ではなく「家の床の間」。実家の床の間にはオオタカとキジの剥製が鎮座していて、幼い頃は広げた翼の羽根の間に指をぶすぶす差しては祖父や父に怒られていたものです。同じような記憶がある人もいるのでは? さて、この特集と関連して「米国人による“趣味の狩猟”で大量の動物が犠牲に」というニュースが出ています。これってもしかすると、よく言われる狩猟民族と農耕民族の違い、みたいなものなんでしょうか。編集を終えた後も「殺して保護する」という感覚がさっぱり理解できない私です。あ、ちなみにうちの場合、オオタカは死んで道端に落ちていたのを父が拾ってきたもの、キジは庭に迷い込んでそのまま居ついたやつが寿命をまっとうしたものです。ワイルドな家ですみません。(編集H.O)

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