2014年8月上旬、イラクの少数派ヤジディの村が過激派組織「イスラム国」(IS)に攻撃された。そのとき何が起きたのか。被害者たちのその後を追った。

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迫害されるイラクの少数派

2014年8月上旬、イラクの少数派ヤジディの村が過激派組織「イスラム国」(IS)に攻撃された。そのとき何が起きたのか。被害者たちのその後を追った。

文・写真=林 典子

 兵士のセブリが自宅で迫撃砲の音を聞いたのは、2014年8月3日午前2時半のことだった。過激派組織「イスラム国」(IS)が、イラク北西部のシンジャール山周辺へ侵攻を始めた瞬間だ。山の南麓にあるここグルゼリック村は、ISの攻撃を最初に受けたヤジディの村となった。

 ヤジディは独特な信仰をもつ人々で、イラクの人口に占める割合は数%程度とみられ、その多くがシンジャール山や周辺の村で暮らしてきた。彼らの信仰についてはさまざまな議論があるが、古代ペルシャの宗教、イスラム教、ゾロアスター教などが入り交じっているとされ、その文化や伝統は口承で引き継がれてきた。

 クルド人自治区の軍隊ペシュメルガに所属するセブリは、朝7時になってようやく母親と妻、6人の子どもを連れて家から逃げ出し、シンジャール山の頂上に運良くたどり着いた。途中で数えきれないほどの遺体を目にしたという。

IS戦闘員と「結婚」させられる少女たち

 同日午前3時には、シンジャールの町に住む15歳のサラ(仮名)の耳にも攻撃の音が聞こえてきた。「あの日、お父さんがどこかで戦っている夢を見たんです。すると突然、銃声が聞こえてきました。それは夢ではなく、現実でした」

 サラは急いでピンク色のワンピースに着替え、素足で家を飛び出して、兄や妹たちとシンジャール山の頂上を目指した。しかし、途中で3台のISの車両に道を塞がれ、サラはほかの若い女性たちとともにモスルへ連行された。「到着すると、ISが奪ったキリスト教徒の家に入れられました。窓という窓が毛布で覆われ、3階建ての家の中にヤジディの女性が700人ほどいました。女性を売買する場所だったのです」

 2日後、サラは無理やりIS戦闘員と「結婚」させられたという。翌朝9時頃には、同じ境遇にあった友人と一緒に家の窓から逃げ出し、自殺しようと近くの川に飛び込んだが、友人が泣き続けたため、自殺を思いとどまった。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2016年3月号でどうぞ。

編集者から

 2013年7月号でキルギスの誘拐結婚をレポートした林典子さんが、今度はISに迫害されるイラクの少数派、ヤジディの人々を追いました。これまで3度現地入りして合計2カ月半にわたって撮影と取材を重ね、今後もヨーロッパに移住した人たちを追っていくとのことです。故郷を追われた一人ひとりの話を読むと、難民問題の新たな側面が見えてきます。同じ3月号の特集「クルド人 踏みにじられる未来」と併せてご覧ください。(編集T.F)

キルギスの誘拐結婚

若い男が女性を連れ去る「誘拐結婚」。中央アジアのキルギスで行われている衝撃の慣習を、フォトジャーナリスト林典子が深く掘り下げ、多面的に伝えています。世界規模の報道写真祭で最高賞を受賞した写真を中心に、計76点を収録。林典子のカメラがとらえた、キルギスの女性たちの悲しみ、強さ、美しさを、ぜひご自身の目で確かめてください。

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