過激派組織「イスラム国」(IS)がイラクに侵攻し、戦いに身を投じる若者たち。クルド人がようやく手にした安定と繁栄は、崩れ去ってしまうのか?

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イラクのクルド人 踏みにじられる未来

過激派組織「イスラム国」(IS)がイラクに侵攻し、戦いに身を投じる若者たち。クルド人がようやく手にした安定と繁栄は、崩れ去ってしまうのか?

文=ニール・シェイ/写真=ユーリ・コジレフ

 独自の文化と言語をもつクルド人は、その歴史の大半においてペルシャ、アラブ、オスマン、トルコといった大国の支配下にあった。現在はトルコ、イラン、イラク、シリアに約2500万人のクルド人が暮らすといわれ、しばしば「国をもたない世界最大の民族集団」と形容される。

 イラクのクルディスタン地域は、同国の北部に位置するクルド人の自治区で、つい2年前まで繁栄を謳歌していた。クルド人最大の敵だったサダム・フセインが、イラク戦争で米国に倒され失脚したのが2003年。これによって、クルド人は山岳地帯に広がる、スイスの国土ほどの面積のこの地域で自治を確立し、イラク国内にありながら準国家的な地位を築いてきたのだ。豊かな石油資源は明るい未来を約束し、投資と開発が進んで、地域は急速に変貌していった。

「イスラム国」がイラクに侵攻

 だが2014年6月、過激派組織「イスラム国」(IS)がイラクに侵攻し、破壊と殺戮が始まった。ISはたちまちこの国で第二の都市モスルを制圧し、1000人以上の市民を殺害。程なくクルド人の居住地域にも侵入して、キルクークなどの主要都市へと迫ってきた。

 イラク軍の逃走で空白地帯となった都市を守ろうと駆けつけたのが、クルド人自治区の防衛を担う軍隊、ペシュメルガだ。人員も装備も不足していたが、兵士たちは果敢にISの攻勢に立ち向かった。クルド人の大学生ボタン・シャルバルゼリは、そんな前線に馳せ参じた志願兵の一人だった。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2016年3月号でどうぞ。

編集者から

 フセイン政権の崩壊後、長く混迷が続いたイラクにあって、北部のクルド人自治区では治安が保たれ、投資や開発が進んでいました。ようやく安定を手にしたクルドの人々を突然襲ったのが、「イスラム国」(IS)の侵攻という予期せぬ出来事でした。
 記事には、筆者ニール・シェイがイラクで出会った若者たちが等身大で描かれていきます。自治区を守ろうと熱意に燃えて参戦し、負傷するクルド人大学生。信仰心からISに加わり、やがて幻滅するアラブ人青年。国の将来に見切りをつけ、難民になってヨーロッパを目指す若者たち…。幸せに生きたいという願いは同じなのに、それぞれの道はなぜここまで隔たってしまうのでしょうか。編集を進めながらも、やりきれない思いが募る記事でした。一日も早く停戦が実現し、平和が訪れるよう願わずにいられません。(編集H.I)

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