正確なデータの記録を重視する気鋭のエジプト考古学者、河江肖剰。3D計測を駆使して、エジプトのギザに立つ大ピラミッドの新たな姿を探る。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本のエクスプローラー 河江肖剰 ピラミッドの実像に迫る

正確なデータの記録を重視する気鋭のエジプト考古学者、河江肖剰。3D計測を駆使して、エジプトのギザに立つ大ピラミッドの新たな姿を探る。

文=田中 真知

 2012年3月、日本のテレビ番組の撮影で、河江肖剰(ゆきのり)はエジプトのギザにあるクフ王の大ピラミッドに登る貴重な機会を得た。現在、ピラミッドに登ることは禁じられており、撮影であろうと調査であろうと許可なしに登ることはできない。

 番組のテーマは、その数年前にフランスの建築家らが発表した、ピラミッド建造法をめぐる新仮説の検討だった。ピラミッド内部にらせん状に傾斜路が造られたとするユニークな説だが、裏づけとなる考古学的証拠は見つかっていない。
 仮説では、大ピラミッド北東の稜線にある、石組みが欠けてできた「窪み」に着目。その内部は狭い洞穴になっていて、奥にある石と石の隙間が内部傾斜路に通じているのではないかと主張していた。

クフ王の大ピラミッドに登る

 河江はこの窪みまで登って、現場から詳細をレポートすることになっていた。洞穴の内部の石組みは不規則で粗雑な作りだった。洞内の石の隙間の奥も明らかにすぐ行き止まりで、先へ続くトンネルがあるとは思えなかった。石組みの細部を観察すればするほど、仮説のような傾斜路が、ピラミッド内部に存在する可能性は低いと河江は思った。

「ピラミッド建設については、オカルトも含めて、さまざまな説が唱えられていますが、内部構造がわからないまま説を組み立てても机上の空論です。最初に説ありきではなく、まずデータを取ったうえで話をしたい。でも、そのデータが圧倒的に足りないのが現実なんです。いかに正確なデータをしっかり集めるか、それが今のエジプト考古学の、最も重要な課題だと考えています」と河江肖剰は言う。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年12月号でどうぞ。

編集者から

 日本版の20年間で、古代エジプト関連の特集が何本あったかを調べたら、今回の特集を除いて全部で17本ありました。そのほとんどが王家の墓やミイラに関するもので、きらびやかな副葬品の写真も数多く掲載されています。「従来のエジプト考古学は『モノを見つけること』を重視していた」と河江さんは特集のなかで言っていますが、本誌のこれまでの特集にもその傾向が見られるというわけです。
 例外は、河江さんの恩師であるマーク・レーナー博士の研究を取り上げた2001年11月号の特集「古代エジプト ピラミッドを造った人々」です。河江さんは、まさにこの「ピラミッドを造った人々」が暮らしていた町の発掘調査に10年以上前から携わっています。その様子についてはWebナショジオの連載「新たなピラミッド像を追って」に詳しく書かれていますので、本誌の特集と併せて読んでみてください。河江さんのすばらしいところは、ピラミッドについて新たな視点を提供してくれること、そして、フィールドワークの大切さと醍醐味を伝えてくれることです。私は特に、第3回の後半「なぜ古代について知りたいのか」が気に入っています。(編集T.F)

「日本のエクスプローラー」は雑誌とWebの連動企画です。

雑誌「ナショナル ジオグラフィック日本版」では、エクスプローラーたちの活動を独自取材で紹介します。
世界を駆けまわるエクスプローラーたちを一緒に応援しませんか。

この号の目次へ

最新号

定期購読

ナショジオクイズ

こちらの元工場の屋上は農場と、あと何として利用されているでしょうか?

  • レストラン
  • 養殖場
  • 住居

答えを見る

ナショジオとつながる

メールマガジン無料登録(週2回配信)

メルマガ登録の詳細はこちら

ナショナル ジオグラフィック日本版 バックナンバー