アフリカ中部を流れる大河は住民の暮らしに欠かせない交通路だが、危険な無法地帯でもある。貨物船や丸木舟の旅は、トラブルの連続だった。

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密林の大河 コンゴ川に生きる

アフリカ中部を流れる大河は住民の暮らしに欠かせない交通路だが、危険な無法地帯でもある。貨物船や丸木舟の旅は、トラブルの連続だった。

文=ロバート・ドレイパー/写真=パスカル・メートル

 全長およそ4700キロのコンゴ川は、アフリカ大陸の9カ国に及ぶ広大な流域をもつが、やはりコンゴ民主共和国との結びつきが圧倒的に強い。
「コンゴ川はわが国の背骨です」と、キンシャサ大学の歴史学教授イジドール・ンデウェル・エ・ンジエムは話す。「背骨がなければ人間は立てません」。コンゴ川がなければ、この国は立ち行かなくなるという意味だろう。

 コンゴ川は源流域から北へ向かった後、中流のボヨマ滝(英国の探検家ヘンリー・モートン・スタンリーにちなんでスタンリー滝と呼ばれていた)を越えた辺りで北西へと進路を変え、その後、南西へ下って大西洋に注ぐ。
 川を管理する官庁が存在しないため、誰もが平等に利用できる自由地帯になっているが、それゆえ資源開発も手つかずだ。390万平方キロ(日本の国土の10倍以上)もある広大な流域は、水力発電と農業開発の無限の可能性を秘め、開発すればアフリカ大陸全体が恩恵を受けて、コンゴに繁栄をもたらすだろう。しかし現実には未開発のままで、コンゴは人口増加や貧困、無法状態、腐敗といった問題を抱え続けている。

河川交通の自由化で、大河が「無法地帯」に

 コンゴ川の交通と通商は国営企業のオナトラ(国営交通公社)が独占してきたが、モブツ政権末期の1990年代に状況が変わった。
「船のエンジンが古くなって故障が増え、遅延続きで信頼を失ったのです」と、オナトラ最高幹部のシルベストル・マニ・トラ・ハマニも認める。

 これをきっかけに政府は新たな策を打ち出した。「河川交通を自由化すればもっともうかると、政治家たちが判断した」のだと河川交通公社(RVF)のティエリー・アンドレ・マイエレは話す。新たに整えられた規制と税制は抜け道が多く、港湾管理者の給与は低く抑えられたために、賄賂やゆすりの温床ができあがった。オナトラやRVFは事業を継続できなくなった。こうして、コンゴ最大の天然資源であるコンゴ川は未開発のまま放置されることになったのだ。

 川で移動する人々は、そんな現状には危険が伴うことをよく知っている。国内外の資本による森林伐採のために川岸の浸食は進む一方で、堆積した土砂をさらう浚渫工事は行われない。港湾当局は賄賂一つで過積載を容認するし、緊急事態に対応できる船もない。コンゴ川の船旅は命懸けなのだ。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年10月号でどうぞ。

編集者から

 以前、コンゴ川の旅を2度も経験したことがある作家の田中真知さんから、現地の話を聞く機会がありました。全身を蚊に刺されてマラリアにかかり、町を歩けば賄賂を要求され、食べ物といえばイモムシやサル…。田中さんは面白おかしく話してくれるのですが、現地ではきっと大変な思いをしたのだろうなと想像します(詳しくは田中さんの著書『たまたまザイール、またコンゴ』でぜひ)。そんな過酷な船旅にあえて挑んだのが、特集の筆者ロバート・ドレイパーと写真家パスカル・メートルです。
 田中さんと同じように、この二人もまたコンゴ川で数々のトラブルに巻き込まれました。本文は、日本版20周年の歴史のなかでも指折りのルポルタージュに仕上がっています。すったもんだの旅の一部始終を、ぜひ本誌でお楽しみください。
 写真家のパスカル・メートルは30年以上アフリカを取材してきたベテランで、2013年9月号「脈動する都市 キンシャサ」や2010年9月号「奪われるマダガスカルの資源」、2009年9月号「絶望のソマリア」などを手がけてきました。今年還暦なのですが、よくもまあ、これほど大変な取材を次々にこなせるものだと感心してしまいます。しかも届けてくれる写真がどれもこれも秀逸! 私が大好きな写真家の一人です。フォトギャラリーも、一枚一枚じっくりご覧いただけると嬉しいです。(編集T.F)

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