ミャンマーのジャングルにそびえる険しい岩峰。東南アジア最高峰とされる山頂を目指した登山家たちは、悪戦苦闘の末、生死を分かつ決断を迫られた。

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ミャンマー 伝説の最高峰カカボラジ

ミャンマーのジャングルにそびえる険しい岩峰。東南アジア最高峰とされる山頂を目指した登山家たちは、悪戦苦闘の末、生死を分かつ決断を迫られた。

文=マーク・ジェンキンス/写真=コーリー・リチャーズ

 中国、ミャンマー、インドの国境に連なるダンダリカ山脈は踏査されていない場所が多く、謎に包まれている。そんな謎の一つが、ミャンマー北部にそびえるカカボラジの標高だ。東南アジアの最高峰とされているが、GPSによる測量はこれまで行われたことがない。この問題を決着させるべく、2014年秋、私たちナショナル ジオグラフィックの登山隊が登頂に挑むことになった。

 ところが、私たちが米国を出発する3週間前の9月10日、新聞に思いがけない見出しが載った。
「ミャンマーで消息を絶った登山隊の捜索が始まる」
 ミャンマー人の登山隊が自国の最高峰に登頂するべく登山を開始していたが、出発から2週間後、隊員の2人が山頂付近で信号を発したのを最後に、連絡が途絶えたという。

 さらに、捜索隊の物資を運んでいたヘリコプターのうち、操縦士2人と補助員1人を乗せた1機が行方不明になってしまった。9日後に補助員がジャングルから自力で脱出して機体の位置が判明し、操縦士も見つかったが、1人は重いやけどを負い、もう1人は死んでいた。長い間、息をひそめていたカカボラジが、わずか1カ月で3人の命を奪ったのだ。

東南アジア最高峰は別の山?

 ミャンマーが突然カカボラジに注目した背景には、近くにそびえる別の高峰をめぐる近年の動きがあっただろう。2013年、アンディ・タイソン率いる米国・ミャンマー混成隊が、カカボラジの近くにあるガムランラジへの登頂に挑戦した。ロシアが作成した新しい地形図と衛星画像を綿密に調べたタイソンは、ガムランラジこそが最高峰ではないかと考えたのだ。

 タイソンの登山隊は、同年9月にガムランラジ初登頂を成功させた。高精度のGPS装置で測った標高は5870メートル。1925年に英国隊が測定したカカボラジの標高は5881メートルなので、それより11メートル低いが、ロシアの測量隊が1970年代と80年代にはじき出した5691メートルよりは高い。

「ガムランラジの方が高いなんて、ミャンマー人は絶対認めようとしないんだ」。
 カカボラジはミャンマーの象徴であり、国民があがめてやまない山だ。その最高峰の地位に外国人が疑問を投げかけたために、ミャンマー人の反発を買ったと、2014年にタイソンは話していた(彼は2015年4月に飛行機事故で死亡した)。

 つまりミャンマー隊は、国の威信を懸け、カカボラジが自国の最高峰であることを証明する任務を帯びていたのだ。山頂手前で消息を絶つ直前、彼らがGPSで測定した標高は5790メートルだった。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年9月号でどうぞ。

編集者から

 こんなに技術が進歩した今でも、GPS機材を持って山頂に立たない限り、その正確な標高が測れないというのはちょっと意外。日本人登山家の尾崎隆さんが登頂に成功した1996年と比べると、雪が“スカスカ”になって登りづらくなったと聞きました。こんなところにも温暖化の影響が…。(編集H.O)

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