• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

象牙の精巧な模造品をアフリカの闇市場へ流し、内蔵のGPSで輸送ルートを追跡する特別取材を敢行。残虐な密猟者たちの足取りが浮かび上がってきた。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

密猟象牙の闇ルートを追う アフリカ発 特別調査レポート

象牙の精巧な模造品をアフリカの闇市場へ流し、内蔵のGPSで輸送ルートを追跡する特別取材を敢行。残虐な密猟者たちの足取りが浮かび上がってきた。

文=ブライアン・クリスティ/写真=ブレント・スタートン

 はく製師のジョージ・ダンテは米自然史博物館の展示に欠かせない職人だ。ガラパゴスゾウガメの「ロンサム・ジョージ」が死んだときも、彼がそのはく製を手がけた。そんな世界屈指の達人ですら、私の依頼した仕事は未経験だった。

 押収された象牙を見本に、見た目も手触りも、本物そっくりの偽物を作ってほしい。それが私の依頼だった。これまで誰もやったことがない仕事だ。模造象牙の内部には、特製のGPS(全地球測位システム)装置と人工衛星による追跡システムを埋め込む。

犯罪組織の資金源、密輸象牙の闇ルートを暴く

 犯罪組織にとって、象牙は重要な資金源となっている。そこで、偽の象牙を利用して密猟者を突き止め、象牙が通った道路や港、積み込まれた船、経由した国や都市、最終的な売却地を追跡する。それが私の計画だ。

 アフリカ中部で市場に流した偽の象牙は、東西どちらかの沿岸部に運ばれ、安全な中継地を経由してアジア市場に達するのか。それとも北上して、アフリカ大陸で最も激しい暴力が吹き荒れる危険な地域を通過するのか。あるいは、輸送前に警察へ届けられる可能性もある。

 密売人は象牙を調べるために、ナイフで表面をひっかいたり、ライターの火を近づけたりする。本物の象牙と違って、合成樹脂で作った偽物なら溶けるからだ。私が依頼した偽の象牙は、こうしたテストに耐える必要がある。
「独特のつやを出す方法も考えてみましょう」とダンテは言った。
「シュレーゲル線も入れてください」。象牙の断面に見える菱形模様もつけるよう頼んだ。

 偽の象牙を闇取引のルートに乗せるため、私はいくつかの国を偵察した。その一つ、タンザニアのダルエスサラーム国際空港では、税関のX線検査で私の荷物が引っかかった。
「これを開けてください」
 私は2本の偽の象牙が入ったスーツケースを開け、これらが模造品であることを示した米魚類野生生物局とナショナル ジオグラフィックの証明書を見せた。

 周りに人だかりができた。税関職員たちは象牙を指さして、何やら話し合っている。象牙に目をつけた職員は私が密売人だと疑っていたし、象牙に仕込んだ追跡装置をX線の画面で見た職員は、私が爆弾を持ち込もうとしていると思い込んでいた。

 1時間余り、すったもんだの議論をした揚げ句、彼らは空港の野生生物の専門家を呼んだ。やって来た専門家は象牙を手に取り、根元の断面に指を走らせた。「シュレーゲル線だな」
「その通りです。入れさせましたから……」
 すると、専門家はいきなり私を指さし、「そんなわけないでしょう」と声を荒らげた。
 10年間一度も間違えたことがないという彼は、有無を言わせぬ口調で断言した。これは本物の象牙だ。私は警察に連行され、取調室のデスクの上で一晩寝ることになった。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年9月号でどうぞ。

編集者から

 象牙がテロ組織の資金源になっているという現実を、今回初めて知りました。アフリカ中部で横行している象牙の密猟やテロ組織の残虐行為は、これまで日本ではあまり報道されてこなかったように思います。銃で撃たれたゾウの死骸を発見、国立公園のレンジャーが密猟団に銃撃されて死亡…本文のいたるところにこんな記述が出てきて、つらく感じることもありますが、ぜひ最後まで読んでほしい貴重な記録です。読む時間がないという方は、フォトギャラリーだけでもご覧ください。
 筆者のクリスティは、2010年1月号「売られる野生動物」や2012年10月号「象牙と信仰」など、野生動物の闇取引に関する特集をこれまで手がけてきました。こうした過去の記事も併せて読んでもらえると嬉しいです。(編集T.F)

この号の目次へ

最新号

ナショジオクイズ

200種類以上の植物を育み、太陽光発電の照明で辺りを照らす写真の「スーパーツリー」はどの国の名物?

  • インドネシア
  • マレーシア
  • シンガポール

答えを見る

ナショジオとつながる

週2回
配信

メールマガジン無料登録

メルマガ登録の詳細はこちら

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー

ナショナルジオグラフィック日本版サイト

広告をスキップ