シャチは群れで暮らし、仲間と力を合わせて狩りをする。役割を分担し、絶妙なチームワークで獲物にありつくさまは、彼らの賢さを物語る。

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獲物を追い詰めるシャチの群れ

シャチは群れで暮らし、仲間と力を合わせて狩りをする。役割を分担し、絶妙なチームワークで獲物にありつくさまは、彼らの賢さを物語る。

文=バージニア・モレル/写真=ポール・ニックレン

 流線形のつややかな巨体、白と黒のツートンカラーが印象的なシャチは、クジラやイルカと同じ海の哺乳類。だが、メルヴィルの小説『白鯨』のように優れた文学作品に描かれた例はまだなさそうだ。

 シャチと聞いて私たちが思い浮かべるのはたいてい、水族館でジャンプを披露し、狭苦しいプールをぐるぐると泳ぐ姿だろう。窮屈な環境は、飼育下のシャチの心を傷つけると懸念する人もいる。なんとも痛ましいことだ。
 外洋で目にする野生のシャチは生命力と知性にあふれ、陽気で、時に狡猾だ。海を愛し、狩りを楽しみ、生きる喜びを満喫する彼らの姿には、どんなショーもかなわない。

ニシンを食べるノルウェーのシャチ

 ノルウェーのフィヨルドには、冬になるとシャチの群れが姿を見せる。獲物のニシンを追ってくるのだ。鯨類生物学者のティオ・シミラはこの海で、20年間にわたってシャチを観察してきた。

 ニシンは数こそ多いが、たやすく捕まる獲物ではない。泳ぐスピードはシャチよりも速く、防壁のような群れを形成するからだ。ヒゲクジラの仲間なら大量の海水をのみ込んで餌をこし取ればよいが、シャチの場合、そうはいかない。そこで彼らはニシンの大群から、コントロール可能な規模の群れを分断する。「海面近くに追い上げ、周囲を回ってニシンの群れを球状にまとめるんです」と、シミラは説明する。
 これがシャチの回転木馬(カルーセル)だ。シミラはシャチが狩りに使う、この「カルーセル・フィーディング」という技法の専門家である。

 シャチの群れ(ポッドと呼ばれる母系の家族集団)のメンバーは、交代でニシンの群れの下に潜る。そして周囲を泳ぎながら気泡や鳴き声を放ち、白い腹部をひらめかせてニシンを威嚇する。するとニシンは、ますます小さく密集する。カルーセルが最高潮に達すると、ニシンは逃げ道を求めて海面に身を躍らせる。「そうなると、まるで海が沸騰しているように見えます」

 ニシンたちを完全に掌握すると、1頭のシャチが群れの端を尾でたたく。お膳立ては完了、いよいよディナーの始まりだ。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年7月号でどうぞ。

編集者から

 海を舞台にした動物パニック映画といえば、まず浮かぶのが名作『ジョーズ』。海で楽しげに遊ぶ人々に、不気味な音楽とともに忍び寄る背びれのイメージは強烈でした。同じジャンルでも一味違う印象を残したのが、シャチの登場する映画『オルカ』です。作中のシャチは、高い知能と家族愛をもった生き物として描かれていました。そして家族を殺されたシャチの、漁師たちへの復讐が始まる…というストーリーだったかと思います。
 古い映画の記憶をよみがえらせてくれたのは、今回の特集に登場するノルウェーのシャチでした。「クジラも餌食にする、海の殺し屋」と恐れられるシャチですが、見事なチームワークで狩りをする知性に加えて、弱者をいたわる優しさも持ち合わせているようです。
 さらに今回新たに知った一面は、シャチの食事マナーの良さ。大口をあけて大量のニシンを一気に呑み込んだりはせず、1匹ずつ口に入れ、頭や中骨は後から吐き出すんだとか。大きなシャチがお行儀良く、ちまちまと1匹ずつニシンを食べるとは、なんとも意外でした。(編集H.I)

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