ひとしきり猛威を振るうと、姿をくらますエボラウイルス。人知れずその運び屋となっている生き物は何か? 研究の最前線を追った。

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エボラはどこに潜むのか

ひとしきり猛威を振るうと、姿をくらますエボラウイルス。人知れずその運び屋となっている生き物は何か? 研究の最前線を追った。

文=デビッド・クアメン/写真=ピート・ミュラー

 エボラの不可解な特徴の一つは、何年もの間どこかに雲隠れすることだ。1976年に当時のザイール(現在のコンゴ民主共和国)とスーダン南部(現在の南スーダン共和国)でほぼ同時期に最初の流行が起きて以来、エボラの流行は散発的に繰り返されてきたが、1977~94年の間はエボラによる死者が一人も確認されていない。エボラはおとなしいウイルスではなく、感染者に激しい症状を引き起こす。空白の17年間に人への感染が起きていたら、誰かがきっと気づいたはずだ。

 ウイルスは生物の細胞の機能を利用して増殖するため、生物の体内に入り込まなければ長くは生存できないし、増殖できない。だから、少なくとも一種の動物や植物、あるいは菌類や微生物の宿主が必要になる。

自然宿主はオオコウモリ?

 人間以外の動物に感染する病原体が、まれに人に感染して病気を引き起こすことがある。こうした病気を「人獣共通感染症」と呼ぶ。エボラもそうした病原体の一つであり、とりわけ厄介で不可解なウイルスだ。人間が感染すると重い症状に苦しみ、患者の多くは死亡するが、ひとしきり猛威を振るうと、エボラはどこかに姿をくらます。流行が終息してから、次の流行まで、いったいどこに潜んでいるのだろうか。

 チンパンジーやゴリラの体内でないことは確かだ。人間での流行とほぼ同じ時期に、同じ地域でチンパンジーやゴリラの死体が多数発見され、その一部からエボラの抗体が検出されていることから、類人猿もエボラへの感染で大量に命を落とすことがわかっている。人間が類人猿の死肉を食用にしたために感染が広がったケースもある。

 長期にわたって体内にウイルスを保有する生物を「自然宿主」と呼ぶ。多くの場合、自然宿主の体内ではウイルスは症状を起こさない。

 エボラの自然宿主は今もわかっていない。オオコウモリという説が広まっているが、推測の域を出ず、確実な証拠はないのが実情だ。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年7月号でどうぞ。

編集者から

 私は2007年11月号の特集「人と動物を襲う感染症」も担当したのですが、そのときすでに、オオコウモリがエボラウイルスの自然宿主である可能性が指摘されていました。それから7年半以上たった今も、その可能性が可能性のままであるという実情を今回の特集で知り、エボラ研究の困難さを改めて感じます。
 世界保健機関(WHO)の報告によれば、6月第1週にはギニアとシエラレオネで合計31人の新規患者が確認されたそうです。感染者の治療や予防への支援はもちろんですが、研究に対する継続的な支援も必要だと思いました。(編集T.F)

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