花粉を運び、世界の食料生産を支えるミツバチ。巣箱からハチが消える謎の現象が世界各地で発生し、病気に負けないハチを求めて試行錯誤が続いている。

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90億人の食 希望のミツバチ

花粉を運び、世界の食料生産を支えるミツバチ。巣箱からハチが消える謎の現象が世界各地で発生し、病気に負けないハチを求めて試行錯誤が続いている。

文=チャールズ・C・マン/写真=アーナンド・バルマ

 巣箱から突然、たくさんのミツバチが消えていなくなる「蜂群崩壊症候群(CCD)」という現象が、2007年に報告された。欧米各地で突如として頻発したこの現象を、マスコミは「世界の農業を揺るがす脅威」と報じた。なにしろ世界の食料供給の3分の1は昆虫による受粉に依存し、その主役はミツバチなのである。

巣箱からミツバチがいなくなる原因は?

 蜂群崩壊症候群の原因は、一つだけではなさそうだ。今では研究者の大半が、害虫、病原体、殺虫剤、生息環境の減少などの複合的な要因が背景にあると考えている。なかでもミツバチに寄生するミツバチヘギイタダニは重大な要因だ。

 害虫に悩む農家の大半は、殺虫剤を使う。ダニの駆除に有効な殺虫剤は10種類以上が開発され、普及している。だが今回取材したミツバチの研究者や養蜂関係者は例外なく、ハチの巣箱にそうした薬剤を使うのを嫌がっていた。しかも、ミツバチヘギイタダニの相当数はすでに殺虫剤への抵抗性を獲得しているという。

 別のアプローチとして、ダニの遺伝子を標的にした駆除方法も開発中だ。アグリビジネス大手モンサント社の傘下にあるビーオロジクス社では、RNA干渉(RNAi)という現象の利用を検討している。
 この方法にも問題はある。米国のミネソタ大学でミツバチを研究するマーラ・スピバクは、RNAiが単一の標的を狙う点を懸念する。
「こちらがどこか特定の領域に狙いを絞れば、相手は必ず抜け道を見つけるものです」。彼女の考えでは、ミツバチの大量死を回避するには、人間の力を借りずに自力でダニや病気と戦える「健康で、たくましい」ミツバチが必要だという。

 スピバクらの研究チームは、交配によって、ダニに対して抵抗性をもつミツバチを得ようと取り組んできた。ルイジアナ州バトンルージュにある米国農務省の研究センターでも、ジョン・ハーボらのチームが同様の研究を進めている。両チームの手法は異なるが、狙いが「きれい好き」なミツバチである点は共通している。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年5月号でどうぞ。

編集者から

 英国の修道士が、おんぼろ車で何十年もかけてヨーロッパ、中東、アフリカまで旅して女王バチを集めまくり、“スーパーミツバチ”めざして交配を繰り返す…。記事の冒頭で紹介されている、病気に強い「バックファスト・ビー」誕生までの物語は、まるでロードムービーのよう。思わず引き込まれました。
 蜂蜜をつくるミツバチは身近な生き物と思っていましたが、食料生産で重要なのは、むしろ受粉の役割。小さな体で花粉を運び、世界の食を支えているんですね。ダニや病気、農薬などにおびやかされながらも、せっせと働くミツバチ。知れば知るほど、けなげに思えてきました。(編集H.I)

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